商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「ロゴの商標」という言葉だけでは、弁理士に正確に伝わらない可能性がある

ロゴの商標調査の依頼を検討したいので、費用の見積もりが欲しい。
ロゴも商標登録をした方が良いか、意見を聞きたい。

 

弁理士として商標の仕事をしていると、このような声を聞くことが結構あります。
しかし、正直なところ、これには困ってしまうことも少なくありません。

 

というのも、相談者等が言う「ロゴ」が、具体的に何を示しているのかわからないことがあるからです。そのため、相談者等が認識している「ロゴ」と、弁理士が認識している「ロゴ」の概念が、違うものになってしまう可能性が懸念されます。

 

この際、完成した実物のロゴを拝見できれば問題ないのですが、それができない場合も少なくありません。そのような場合に、相談者等と弁理士との意思疎通に齟齬が生じておかしなことにならないよう、注意が必要です。

 

その対策としては、「ロゴの商標」の態様を明確に伝えることが挙げられます。
と言っても、「〇〇〇の部分の色が何色で・・・」とか「〇〇〇の部分が斬新な特徴で・・・」といったデザイン的な細部まで、最初から伝えてほしいわけではありません。弁理士としてはまず、「そのロゴが、どのような構成要素によって作られているものであるか」を教えてほしいのです。

 

つまり、弁理士への伝え方にもコツがあるということです。
というわけで今回は、この点について少しお話したいと思います。

 

ロゴマークの基本的な構成要素とは?

「ロゴの商標」にかかわる事業者の方々が「ロゴ」と言う場合、それが「ロゴマーク」を意味していることは間違いないでしょう。この点は、弁理士の認識も同じはずです。

 

ロゴマークを構成する基本的な要素としては、以下のようなものがあると言えます。

 

1.ロゴタイプ
→ 「文字」を装飾的・デザイン的に表したもの

 

2.シンボルマーク
→ いわゆる「マーク」で、図案化して表したデザイン

 

3.タグライン
→ スローガンやメッセージなど、付記的に表される文字

 

一般的な「ロゴマーク」の構成イメージは、「1+2」となるでしょうか。
たとえば、よく見かける企業ロゴを思い浮かべてみてください。
図案化されたマークの隣や上下に、デザイン化された文字で会社名が表されたロゴがイメージできるのではないでしょうか。

 

一方で、「1+2+3」の場合もありますし、「1だけ」の場合もあります。
「1と2がデザイン的に一体化」している場合もあるでしょう。
「3」だけというのは、あまりないかもしれませんね。

 

また、そのロゴマークにある「1」や「2」の構成要素が、それぞれ1つだけとも限りません。「1+2」の構成からなる要素Aと、別の「1+2」の構成からなる要素Bが結合したロゴというのも少なくないでしょう。

 

要するに、ひとえに「ロゴ」と言っても、構成のバリエーションは実に様々なのです。

 

・なぜ、弁理士が困ってしまう場合があるのか?

なぜ、相談者等に「ロゴの商標」とだけ言われると、弁理士が困ってしまう場合があるのでしょうか。その理由こそ、まさに上述のように、「ロゴ」と言っても、様々な構成のバリエーションが存在しているからです。そして、それが具体的にどのような態様なのか、「ロゴの商標」という言葉からだけではわからないからです。

 

では、なぜロゴの具体的な態様がわからないとダメなのでしょうか。

 

たとえば、冒頭のように、
ロゴの商標調査の依頼を検討したいので、費用の見積もりが欲しい。
といった問い合わせがあった場合。

 

まず、商標調査の費用は、「商標ごと」に算出されるのが一般的です。
そして、その商標が複数の構成要素から成立している場合は、「構成要素ごと」に調査が必要となる場合もあります。さらに、その構成要素が「文字要素」か「図形要素」かによって、調査方法が異なります。通常、「図形要素」の商標調査の方が作業的に大変ですので、一般的には、「文字要素」の商標調査よりも料金が割高となります。

 

では、「ロゴの商標」の場合はどうなるでしょうか。
基本的に、ロゴタイプの場合は文字要素シンボルマークの場合は図形要素として商標調査がされることになります。ただ、デザイン化の度合いによっては、ロゴタイプでも図形要素の調査が必要となる場合もあります。ロゴタイプとシンボルマークが結合したロゴマークや、シンボルマークの中にロゴタイプがあるような、デザイン的に一体化したロゴマークの場合は、文字要素と図形要素の両方の調査が必要です。なお、企業キャラクターのイラストは、図形要素として調査をします。

 

さて、もうおわかりなのではないでしょうか。
結局のところ、「ロゴの商標調査」は、そのロゴマークを構成する要素の数や具体的な態様によって、商標調査の対象が決まってくるわけです。そして、商標調査にかかる費用は、それに応じて変動することになります。

 

ですから、「ロゴの商標調査をしたい」とだけ言われても、少なくともロゴマークの構成要素が把握できなければ、調査費用のお見積りをお出しすることは難しいのです。(文字や図形の商標調査を何件依頼しても定額という料金体系であれば可能でしょうが、そのような料金体系を採用している弁理士などまずいないと思います。)

 

なお、冒頭のように、「ロゴも商標登録をした方が良いか、意見を聞きたい。」と言われた場合も同様で、少なくともロゴマークの構成要素が把握できなければ、弁理士としてはコメントのしようがありません(もちろん、一般論としてはコメントできるでしょうが…)。

 

これらは、どんなベテラン弁理士であっても同じでしょう。

 

余談ですが、そのロゴの商標について、「どの構成要素について、どのような商標調査が必要か」の判断には、弁理士の手腕が問われます。調査の精度についても言えることですが、「誰に商標調査を依頼するか」という点は非常に重要です。「誰に商標調査を依頼しても同じ」にはなりませんので、この点には十分にご注意ください

 

弁理士に明確に伝えるためにはどうしたら良いか?

それでは、「ロゴの商標」の態様を弁理士に明確に伝えるにはどうすれば良いでしょうか。

 

当然ながら、もっとも理想的なのは、完成したロゴの実物を見てもらうことです。
今の時代、メール添付で、画像ファイルやPDFを送ることは難しくないでしょう。
面談や打ち合わせで、実際に説明をしながら見てもらえればより良いと思います。
依頼前の問い合わせや事前相談の段階で、実際のロゴについて情報開示をするのは抵抗があるかもしれませんが、弁理士には厳しい守秘義務が科されていますので、その点は安心して良いと思います。

 

それが難しい場合は、具体的な構成要素を、言葉でしっかり伝えることです。
この時、「ロゴタイプ」や「シンボルマーク」といった用語を用いることで、より伝わりやすくなるでしょう。たとえば、「花をモチーフにしたシンボルマークの横に、〇〇〇と△△△の文字を上下二段で、それぞれロゴタイプにして配置しているロゴマークの商標」と説明するだけでも、「ロゴの商標」とだけ言われるのとはまったく違います。このような説明があれば、たとえば、商標調査の費用についても、ある程度のお見積りが可能でしょう。

 

以上の点、弁理士に「ロゴの商標」について問い合わせをする際などには、ぜひご留意いただければと存じます。

 

というわけで、今回は弁理士視点でのお話になってしまいましたが、弁理士との意思疎通を図る際には意外と重要な点になりますので、ご参考になれば幸いです。

 

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【商標登録】出願をする理想的なタイミングとは?

商標登録を考えている事業者の方々が疑問に思っている事柄の一つとして、「出願をするタイミング」が挙げられるのではないでしょうか。すなわち、自身の商標について、「いつ、出願をするべきか?」という話です。

 

この点については、事業者の知識や知財意識の強さによって、認識にかなり差が出る印象があります。また、理想的なタイミングをわかっていても、諸事情から、その時期に出願をすることが難しいということも、実際には少なくないでしょう。

 

ただ、そのような理想的なタイミングを知っているというだけでも、事業者にとって有意義となり得るのは間違いないはずです。というわけで、今回は、商標登録出願をする理想的なタイミングについて、簡単にお話してみたいと思います

 

・理想的なのは、商標の使用開始前に登録完了ができるタイミング

商標登録をすると、「商標権」を取得することができます。そして、これにより、願書に記載した商品・サービスについて、その商標を独占的に使うことが認められます。言い換えると、その商標を事業で安心・安全に使うことが実質的に保証されるということです。

 

事業者にとってみれば、その商標を実際に使い始める前に、このような使用の安全性を確保しておくことが理想的なのは言うまでもありません。このように万全を期すことで、使用開始後に、他者から商標権侵害のクレームを受けたり、商標変更を迫られたりするトラブルに巻き込まれるリスクを、事前に回避することができます。

 

一方、ご存知のように、商標登録をするためには、出願手続をして、特許庁の審査をパスすることが必要です。最近では、この審査結果が出るまでに、だいたい6~8か月程度がかかっている印象です。
※ちなみに、特許庁の「商標審査着手状況(審査未着手案件)」のページで、審査着手までの目安となる期間が公表され、適宜更新されています。

 

ということは、商標登録の出願をする理想的なタイミングというのは、「自身がその商標を使い始める前に登録完了ができる時期」と言えるでしょう。より具体的には、「実際に商標を使い始める6~8か月以上前」ということになるでしょうか。

 

もちろん、これは審査で引っかかることなく、スムーズに登録が認められることが前提ですので、審査で引っかかりそうな場合は、予想される拒絶理由によって、事前に戦略を立てておく必要があるでしょう。

 

・おそらく、ほとんどの事業者の出願が「使用開始直前」というのが現状

上述のように、商標登録出願をする理想的なタイミングというのは、自身がその商標を使い始める前に登録完了ができる時期と言えます。しかし、現状としては、このような理想的なタイミングで出願されているケースは、あまり多くはないと思われます。

 

たしかに、知財を重視している大企業は、このあたりはしっかりしている印象があります。ただ、それも念入りに長期的な事業計画を立てられ、運転資金にも比較的余裕のある大企業だからこそ可能だと言えるのかもしれません。

 

日本の事業者の多くを占める中小企業や個人事業主にとっては、ビジネスは常にスピードが命と言えるでしょう。よって、新たな商標を考えてから使い始める前に、1年近くも待っている時間的な余裕などないのが一般的ではないかと思われます。

 

ですので、現状としては、多くの事業者の出願のタイミングはおそらく、その商標の「使用開始直前」とか、「使用開始後」となっているのではないかと思われます。

 

とはいえ、やはりこれでは相当なリスクがあることも否定できません。

 

商標登録が完了する前に、その商標の使用を開始する場合には、必ず事前に「商標調査」を実施して、その商標の使用が他人の商標権を侵害することがない点を確認しておくべきです。この商標調査は、「必ずやってください」と専門家として念を押してお伝えしたい点です。そして可能な限り、自分ではやらずに、弁理士できれば、商標専門の弁理士)に依頼することをお勧めいたします。

 

また、その商標の使用を開始して他人の目に触れるようになると、誰かが先に登録や出願をしてしまうリスクがあります。商標登録は、「早い者勝ち」のルールだからです。よって、少なくとも、その商標を実際に使い始める前までには、出願手続を完了させておくことも意識していただきたいと思います。

 

・早期の商標登録出願が、ネタバレ情報となってしまうジレンマも…

ところで、商標登録の出願については、手続から数週間~1か月後くらいには、その情報(出願内容)が公開(出願公開)されることになります。

 

今は、インターネット上で誰でも簡単にそれらの情報を確認することができます。X(旧Twitter)では、出願された商標の情報をひたすら垂れ流しているアカウントもあるようです。よって、実務家や専門家ではない一般の人たちが、このような情報を目にする機会も増えました。

 

一方、特に大企業などは、上述した理想的なタイミングで商標登録出願をすることが多いことから、新しく考案したネーミングなどについて、かなり早い段階で出願をすることも少なくありません。そうすると、それから約1か月以内には、その商標の情報が公になることから、世の中の多くの人々に知れ渡る可能性があります。

 

この点、商標によっては、いわゆる「ネタバレ」に繋がるおそれがあります。

 

たとえば、ゲーム関連企業の出願であれば、その商標から、今後、そのようなタイトルの新作がリリースされることを予測することができます。

 

また、よく話題になるのが、特撮テレビ番組である「仮面ライダー」や「戦隊ヒーロー」の次期シリーズのタイトルです。いずれもシリーズものとして長年続いていますが、東映株式会社は、これらのタイトル等について、放送開始前の数か月~半年前くらいには商標登録出願をしているようです。そのため、これらの商標の公開情報から、かなり早い段階で次期シリーズのタイトルが知られてしまう「ネタバレ」が発生しているようです。一般的には、放送直前に次期タイトルを公表して話題性を高めたいでしょうから、制作者側にとっては、悩みの種ではないかと思われます。

 

このように、商標登録出願のタイミングは、早ければ早い方が良いとはいえるものの、事業者によっては、それにより世の中に今後の事業計画や活動予定を知られてしまう可能性があるというジレンマがあり、なかなか難しい問題を含んでいるとも言えそうです。

 

以上、今回は、商標登録出願をする理想的なタイミングについて、簡単にお話してみました。ご参考になれば幸いです。

 

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「卒業」関連の商標登録を検索して愉しむ

3月も半ばになりました。
最近、街などを歩いていると、「卒業シーズン」という雰囲気を感じます。

 

さて、「卒業」の本来の意味合いは、学業を修了することかと思いますが、世の中では、何かをやり遂げたり、終了したりする意味合いで使われることも多いですよね。

 

そんな「卒業」という語。
きっと、この語を使った商品・サービスの「商標」があるに違いない
そして、それらが商標登録されているものもあるに違いないと、例によってふと思った次第です(笑)。

 

というわけで、今回は「卒業」関連の商標登録を、検索して愉しんでみましょう。

 

・「卒業」の語を含む商標の商標登録を調べてみる

それでは今回は、「卒業」の語を含む商標について、どのようなものが商標登録されているかを検索してみます。

 

検索には、いつものように「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の「商標検索」を利用しましょう。いつもありがとうございます(笑)。

今回は、「卒業」の語を含む商標を検索しますので、一番上の検索項目「商標(検索用)」の「キーワード」に、「?卒業?」と入力するだけでOKです。入力ができたら、画面一番下の「検索」ボタンをクリックしましょう。

 

33件ヒット!!
(※2024年3月13日現在)

 

おやおや、これまた筆者が思っていたよりも、ずいぶん少ない件数となりました。
予想に反して、「卒業」という語は、意外と商標には使われないのかもしれません。

 

なお、このうち1件が現在まだ「審査待ち」状態ですので、商標登録の数としては、32件ということになりそうです。

 

・「卒業」の語を含む登録商標の具体例を眺めてみる

それでは、実際に「卒業」の語を含む登録商標にはどのようなものがあるのか、見てみましょう。さすがに全てを紹介するには数が多いので、筆者が気になった商標をピックアップしてみたいと思います。

 

・「卒業」(登録2090663号) 第3類、30類
・「卒業プラン」(登録4009775号) 第36類
・「卒 業」(登録4264919-2号) 第25類
・「卒業パンツ」(登録4963257号) 第16類
・「卒業」(登録5361323号) 第29類、30類
・「卒業式チューリップ」(登録5361599号) 第31類、44類
・「祝・卒業」(登録5386753号) 第29類、30類
・「人生の\卒業式」(登録5468980号) 第35類、45類
・「小さな人生の卒業式」(登録5794488号) 第45類
・「人生の卒業アルバム」(登録6189560号) 第16類
・「水嫌い卒業」(登録6196721号) 第21類
・「人生最後の卒業証書」(登録6394524号) 第16類、35類
・「卒業させる整体院」(登録6405451号) 第41類、44類
・「卒業整体」(登録6447275号) 第41類、44類
・「人生最後の卒業式を」(登録6710993号) 第45類
・「子育て卒業証書」(登録6747570号) 第16類

 

卒業」という商標ズバリのものも、意外とありますね。
中には、「審査で、よく識別力が認められたなぁ」と思われるものもチラホラ。
人生の卒業」という、ちょっと悲しくなるニュアンスがあるものも意外と多いようです。

 

ネーミング的にインパクトがあるのは、やはり「卒業パンツ」(登録4963257号)でしょうか(笑)。「パンツを卒業するって、いったいどういうこと!?」と一瞬戸惑いますが、指定商品が第16類の「紙製又はセルロース製の乳幼児用使い捨ておむつ,紙製又はセルロース製のパンツ式おむつ,紙製又はセルロース製の乳幼児用おむつ,紙製又はセルロース製の乳幼児用トレーニングパンツ」であるのを見ると、「なるほど!」と納得しますね。

 

ちなみに、「水嫌い卒業」(登録6196721号)の指定商品は、第21類「シャンプーハット」となっており、これまた「なるほど!」なネーミングですね。

 

・過去に商標登録されていた「卒業」関連の商標

最後におまけとして、過去に商標登録がされていて、現在は消滅している「卒業」の語を含む商標にはどのようなものがあったのか、見てみましょう。

 

いろいろありましたが、筆者が気になった例を以下にピックアップしてみます。

 

・「卒業生」 第9類
・「卒業告白大作戦」 第9類
・「高校卒業祭」 第21類
・「ビックリ卒業号」 第9類、第41類
・「全員卒業・全員合格」 第41類
・「子育て卒業式」 第45類

 

「青春」をイメージさせる商標が多い気がするのは、筆者だけでしょうか。
卒業告白大作戦」とか、特に若さを感じて良いですね(笑)。
ちなみに、こちらはゲームタイトル関連の商標だったようです。

 

というわけで、今回は「卒業」の語を含む商標の商標登録を見てみました。
皆様のお気に入りの商標はありましたでしょうか。

 

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ミニ四駆のマシン名の商標登録を検索して愉しむ

先日、朝のテレビのバラエティ番組で、お笑い芸人たちが「ミニ四駆対決」をやっていました。

 

ミニ四駆」というのは、株式会社タミヤが発売している小型の動力付き自動車模型で、電池を付けてスイッチを入れると猛スピードで走りだします。筆者が小学生の頃に大流行して、筆者自身もめちゃくちゃ熱中しました(笑)。もう35年近く前のことです。

 

ですので、そのテレビ番組を見て非常に懐かしく感じたのですが、「ミニ四駆」のブームは、その後も波はありつつ続いていたようですね。それにしても、最近のマシンのデザインはカッコ良い…。

 

ところで、ミニ四駆の魅力の一つとして、「マシン名」が挙げられるのではないでしょうか。当時から、特に男児が喜びそうな、カッコ良いネーミングが多かったように思います。(※実際は、タミヤの他の商品シリーズのマシン名から由来しているものが多いようですが、本記事では「ミニ四駆のマシン名」として扱います。)

 

そして、
そんなカッコ良いマシン名は、きっと商標登録がされているに違いない!
と、例のよってふと思った次第です(笑)。

 

というわけで今回は、ミニ四駆のマシン名の商標登録を検索してみたいと思います。

 

・筆者が所有していたミニ四駆のマシンたち

筆者の子供時代の記憶を辿ったところ、当時所有していたミニ四駆のマシンを思い出したので、商標検索の前に記しておこうと思います。おそらく、同じくらいの世代でミニ四駆に熱中していた方々には、懐かしく感じられるのではないでしょうか。

 

・「ビッグウィッグJr
・「ホーネットJr
・「ホットショットJr
・「スーパードラゴンJr
・「サンダードラゴンJr
・「ファイヤードラゴンJr
・「アバンテJr
・「ダッシュ1号 エンペラー
・「ダッシュ2号 バーニングサン

 

購入した順番も、だいたいこのような感じだったと記憶しています。
ちなみに筆者は、ダッシュ3号が発売されたあたりで「卒業」しました。

 

当時の筆者のお小遣いは、月に300円~500円くらいだったと思いますが、意外とたくさん持っていましたね(当時は、たしか1台600円くらいしたと思います)。ビックリマンシールも集めながら、よくこれだけ買えたものです(笑)。

 

生まれて初めて自力で作った「ビッグウィッグJr」は、特によく覚えています。
ちなみに、私も他の子どもたちと同じく、改造やら何やらいろいろやりましたが、一番スピードが速くて気に入っていたのは「スーパードラゴンJr」だった記憶があります。

 

ミニ四駆のマシン名の商標登録を検索してみる

それでは、前置きが長くなりましたが、ミニ四駆のマシン名の商標登録を検索してみましょう。今回も例によって、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の「商標検索」を利用します。

 

今回は、検索結果のみを紹介したいと思います。
なお、検索手順は、以下のように行ないました。

 

1.検索項目「出願人/権利者/名義人」のキーワードに、メーカー名である「株式会社タミヤ」を入力。
2.検索項目「類似群コード」のキーワードに、「模型おもちゃ」などの商品が該当する「24A01」を入力。
3.「検索」ボタンをクリック

 

このように検索すると、110件がヒットしました(※2024年3月7日現在)。
ただ、これらの商標には、タミヤロゴマークや、ミニ四駆以外の商品に関する商標なども当然含まれますので、すべてがミニ四駆のマシン名に関連する商標にはなりません

 

そこで、筆者の方で、これらの中で「ミニ四駆のマシン名」に関連していそうな商標を絞ったところ、約45件程度あるように見受けられました。

 

・商標登録がされている具体的なマシン名は?

では、商標登録がされているそれら約45件の商標のうち、私が気に入った30のマシン名を紹介してみたいと思います。

 

・「リバティエンペラー\LIBERTY EMPEROR」(登録3106213号)
・「小覇龍\シャオバイロン」(登録3212159号)
・「マグナムセイバー\MAGNUM SABER」(登録3267652号)
・「ソニックセイバー\SONIC SABER」(登録3267653号)
・「ビッグ・バン・ゴースト\BIG BANG GHOST」(登録3267684号)
・「バーニングサン\BURNING SUN」(登録3279143号)
・「ビークスパイダー\BEAK SPIDER」(登録4004751号)
・「SPIN-AXE\スピンアックス」(登録4052541号)
・「ブロッケンギガント\BROCKEN GIGANT」(登録4052644号)
・「ファイターマグナム\FIGHTER-MAGNUM」(登録4055979号)
・「レイスティンガー\RAY STINGER」(登録4074156号)
・「ストラトベクター\STRATO VECTOR」(登録4077662号)
・「スピンコブラ\SPIN COBRA」(登録4103240号)
・「ハリケーン ソニック\HURRICANE SONIC」(登録4108815号)
・「サイクロンマグナム\CYCLONE MAGNUM」(登録4133025号)
・「ガンブラスターXTO\GUNBLUSTER XTO」(登録4193846号)
・「ベルクカイザー\BERGKAISER」(登録4203948号)
・「ビートマグナム\BEAT―MAGNUM」(登録4218062号)
・「バスターソニック\BUSTER―SONIC」(登録4239637号)
・「マッドブル\MAD BULL」(登録4244070号)
・「シャドウブレイカー\SHADOW BREAKER」(登録4253701号)
・「ファイヤースティンガー\FIRE STINGER」(登録4261364号)
・「ストームクルーザー\STORM―CRUISER」(登録4290747号)
・「ライジングトリガー\RISING―TRIGGER」(登録4303721号)
・「ブレイジング マックス\BLAZING―MAX」(登録4307397号)
・「ブリッツァーソニック\BLITZER―SONIC」(登録4383004号)
・「HORNET」(登録4843360号)
・「ポセイドン」(登録5166160号)
・「ファイアードラゴン」(登録5330724号)
・「しろくまっこ」(登録5737216号)

 

主に英単語2語を結合した造語ネーミングが多いですが、どれもカッコ良いですねぇ。
個人的には、とてもネーミングセンスが良いと思います。

 

というか、こうして並べて眺めると、必殺技のようなネーミングが多い気がします。「ブロッケンギガント!」とか「シャドウブレイカー!」って、何だかポーズをとって叫びたくなりませんか?。筆者だけでしょうか(笑)。その中で一つだけ、「しろくまっこ」という可愛らしいネーミングがあるのが、また興味深いです。

 

私の所有していた、「バーニングサン」、「HORNET」の商標登録もありました。
(「ファイヤードラゴン」ではなく)「ファイアードラゴン」の登録もありますね。

 

ちなみに、他に「株式会社田宮模型」名義での商標登録もあるようです。
たとえば、「アバンテ\AVANTE」(登録2243449号)は、こちらの名義で商標登録がされていました。

 

こんなふうに見ていたら、何だか久しぶりにミニ四駆を作ってみたくなりました(笑)。
というわけで、今回はミニ四駆のマシン名の商標登録を検索して、商標登録がされている具体的なマシン名を眺めてみました。当時の思い出などを懐かしんでいただけましたら幸いです。

 

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「ひなまつり」に関連した商標登録を検索して愉しむ

2024年、早くも3月になりました。
3月というと、多くの人が思い浮かべるのが「ひなまつり」ではないでしょうか。筆者は個人的にはあまり馴染みがありませんが、こういった伝統的な日本の文化は大切にしてほしいと思っています。

 

さて、例によって、「ひなまつり」に関連した商標登録がどれくらいあるのか、気になってきませんか? 商標オタク(?)の筆者だけでしょうか。

 

というわけで、今回は「ひなまつり」に関連した商標登録について、検索してみましょう。

 

・「ひなまつり」の称呼を含む商標の商標登録を検索!

「ひなまつり」に関連した商標としては、実際にはいろいろあるかもしれませんが、今回はシンプルに、「ひなまつり」という読み方(称呼)が含まれる商標の商標登録を検索してみましょう。

 

今回も、検索方法はシンプルですので、もしよろしければ、皆様も一緒にやってみてください。例によって、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の「商標検索」を利用します。

 

ページが表示されたら、「商標(マーク)」にある一番上の検索項目「称呼(単純文字列検索)」の「キーワード」の入力フォームに、「?ヒナマツリ?」と入力します。ちなみに、前後の「?」は文字化けではなく、「〇〇〇ヒナマツリ」、「ヒナマツリ〇〇〇」、「〇〇〇ヒナマツリ△△△」などと読まれる商標もヒットさせるために必要となります。

 

入力できたら、画面一番下の「検索」ボタンをクリックしましょう。

 

・気になる「ひなまつり」関連商標の検索結果は?

気になる検索結果は・・・

 

8件ヒット!!
(※2024年3月1日現在)

 

この件数は、さすが筆者が思っていたよりかなり少なかったです。
というか、以前に検索した「節分」商標の件数と偶然にも同じですね。

astermarks.hatenablog.com

 

件数が少ないので、検索結果一覧に出てきた商標をすべて見てみましょう。

 

・「LOTTE\ひなまつりパック」(登録4982915号) 第30類
・「百段雛まつり」(登録第5450973号) 第41類
・「ひなまつり」(登録第5668471号) 第33類
・「雪印メグミルク\ひな祭り」(登録第5779053号) 第29類、30類、32類
・「さくらもも\ひな祭り」(登録第6134842号) 第30類
・「ヒナまつり」(登録第6136339号) 第9類、第28類、第41類
・「小さなひなまつり」(登録第6201337号) 第30類
・「ひなまつり」(登録第6459481号) 第8類、16類、21類

 

「ひなまつり」ズバリの商標登録も、いくつかありますね。
これらは、指定商品が「ひなまつり」の行事とは一般的に関係しないものであることから、登録が認められていると推測されます。あれ?でも「お酒」(第33類)って、「ひなまつり」と関係のある商品ですかね?

 

・短期間しか使わない商標を商標登録するべきか?

1シーズンの短期間しか使わない等、ライフサイクルの短い商品に使う商標について、商標登録をするかどうかは悩ましい問題かと思います。

 

この場合、商標登録まではせず、「商標調査」を実施することによって、事前にその商標について使用上の問題がないかをチェックしておくというケースが、少なくないことでしょう。一般的には、費用対効果を考えると、このような商標対策が現実的かつ有効だと思います。

 

もっとも、いざ使い始めたら予想以上に商品が好評で、やっぱり継続的に使おうかなとなる場合もあるでしょうから、そういった可能性が考えられそうであれば、1日も早く出願手続を済ませて、商標登録を狙った方が望ましいとも言えるでしょう。

 

なお、「ひなまつり」、「節分」、「クリスマス」などのイベントシーズンにしか使わない商標の場合、それらの使用期間としてはより一層短いと言えるかもしれません。ただ、「必ず1年に1回は機会がある」という点で、一般的なライフサイクルが短い商品に使う商標とは、少し事情が異なると言えるかもしれません。

 

たとえば、毎年イベントシーズン前になるたびに弁理士に商標調査を依頼して、その商標の使用の安全性をチェックしてから商品に使うくらいなら、思い切って最初から商標登録をしておいた方が、長い目で見れば費用は節約できるかもしれません。

 

悩ましい問題ではありますが、その商標が「毎年恒例の商標」となるような場合には、いろいろと検討の余地がありそうです。

 

というわけで、今回は「ひなまつり」という読み方(称呼)が含まれる商標の商標登録について調べてみました。

 

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「J-PlatPat」の仕様が一部変更になりました

本ブログでもよく登場する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」が、本日(2024年2月26日)より、アップデートされました

 

今回のアップデートで、仕様が一部変更となり、商標関連の検索においても検索方法が以前と若干変わった点がありますので、今回はそれについて簡単に書いてみたいと思います。

 

・「出願人/権利者/名義人」等の検索が、部分一致検索に変更された

今回のアップデートによる変更点については、「特許情報プラットフォームの機能改善について」や、「J-PlatPat 機能改善について」に記載されておりますので、詳細は各自でご確認いただければと思います。

この中でも、商標に関する検索では、特に注意が必要な変更点があります

 

それは、今回のアップデートで、商標検索」において、検索項目「出願人/権利者/名義人」、「国内代理人」、「異議申立人」の検索が、「完全一致検索」から「部分一致検索」に変更されたです。

 

たとえば、これまでは「株式会社ABC」が出願人等である商標を検索する際、キーワードには「株式会社ABC」と入力する必要がありました。これが今回の仕様変更により、キーワードに「ABC」と入力すれば、「ABC」を含む出願人等がすべて検索されるようになりました。

 

・検索用途によっては、逆に使いにくくなったのでは…?

このように、今後は「ABC」と入力すれば、「ABC」を含む出願人等がすべて検索されるようになるわけですが、「株式会社ABC」だけが出てくるわけではありません

 

「株式会社ABC」の他にも、「ABC株式会社」、「ABCD株式会社」、「株式会社ABCDE」、「XYABC株式会社」などが出てくることになります。さっさと「株式会社ABC」が出願人等である商標を調べたい場合には、かえって手間が増えることになりそうです

 

それなら、キーワードに「株式会社ABC」を入力すれば良いかというと、それでも部分一致検索になれば、「株式会社ABC」の他に、「株式会社ABCD」や「株式会社ABCDE」、「〇〇〇株式会社ABC」などが依然として出てくることになります。

 

たとえば、「株式会社ABC」が保有する商標の数を知りたくて、「株式会社ABC」をキーワードで検索した場合、部分一致検索となることで、「株式会社ABCD」や「株式会社ABCDE」などの保有商標(ノイズ)も件数に含まれることになります。これが数件、数十件であれば、目で数えて除外すれば良いですが、数百、数千と出てきた場合、正確な件数の把握が困難になるのではないでしょうか。筆者の気のせいでしょうか?

 

・本当に「機能改善」なのか大いに疑問…

今回のアップデートは、「機能改善」と謳われていますが、この商標検索における「出願人/権利者/名義人」等の検索に限って言えば、個人的には、全然「機能改善」ではないように思います。

 

むしろ、今までどおりワイルドカード「?」が使えた方が、知りたい情報を素早く正確に検索できる気がします。せめて「除外キーワード」でワイルドカード「?」が使えれば良かったのですが、現時点では、「出願人/権利者/名義人」等が検索項目の場合は、使えなくなっています。

 

というか、「完全一致検索」から「部分一致検索」に変更するのではなくて、「完全一致検索」と「部分一致検索」を選択できるようにすれば良かっただけの話では?ラジオボタンとか付けて。それでこそ「機能改善」なのでは?

 

というわけで、個人的な意見を言いますと、

 

元に戻してください!!

 

ということに尽きます(苦笑)。

正直、この点については何のメリットもありません…。

 

もし、どなたか以前と同じように、「J-PlatPat」で出願人等を一発で完全一致検索できる方法をご存知でしたら、教えていただけると助かります・・・。(WIPOの「Global Brand Database」などは使わずに)

 

というわけで、なんだか釈然としない気持ちではありますが、今回は、本日(2024年2月26日)よりアップデートされた「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の仕様の一部変更について、お話いたしました。

 

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私が嫌いな「商標に関する説明」

知的財産」には、様々なものがあります。
このうち、特許庁に出願をして権利取得の対象となるものが、「発明」、「考案」、「意匠」、「商標」です。

 

さて、本ブログで主題としている「商標」ですが、これらの「発明」などと性質を比較する際、よくなされる説明があります。

 

それは、

 

商標は、「選択物」である。

 

というものです。

 

発明や意匠などは「創作物」であるが、商標は「選択物」である
などと、説明されることも少なくありません。

 

もう少し突っ込んだものになると、
商標は、創作性のない「選択物」にすぎない
といった言い方がされる場合もあります。

 

このような説明からは、商標とは、創作物とは違って、すでに存在する文字等を選択するだけ(選択物)なので、それ自体に価値はないという印象を受けかねません。

 

たしかに、発明や意匠について特許や意匠登録を受けるためには、それらに新規性や進歩性・創作非容易性があることが条件となる一方、商標について商標登録を受けるためには、そのような条件は必要ありません。辞書に載っている一般的な語であっても、商標登録を受けることは可能です(※もちろん、識別力などの登録要件をクリアすることは必要です)。そういった意味では、この説明は核心を突いたものかもしれません。

 

しかし、商標の仕事に携わる商標弁理士としては、「商標は創作物ではない」とか、「商標は選択物にすぎない」といった説明がされているのを見聞きすると、よくカチンときます(笑)。おそらく、他の商標弁理士も、同じような気持ちを抱く方々は少なくないと思います。はっきり言って筆者は、このように商標について説明されるのが嫌いです。

 

だって、商標の考案って、とてもクリエイティブな作業ではないですか?

 

造語の文字商標であれば、今まで聞いたことのない斬新なワードも少なくありません。
ロゴマークの考案なら、まさに「デザイン」の過程そのものです。

 

辞書に載っているようなシンプルな文字であっても、あえてその文字を選ぶことには、事業者の想いや理念、こだわりが含まれていることでしょう。シンプルなシンボルマークを作成する場合も同様です。

 

商標登録などの商標実務も同じですが、「簡単なようで、簡単ではない」のが「商標」だと思います。そして、創作と同様に、商標の考案にも無限の可能性があると、筆者は思っています。

 

今まで聞いたこともないような語が、秀逸なネーミングとなることは少なくありません。そして、そのようなネームは「強い商標」ともなり得ます。

 

商標は、たしかに選択物なのかもしれません。ですが、創作性を発揮して商標を考案すれば、より「強い商標」になり得る。筆者は、そのように思っています。

 

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