商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

私が嫌いな「商標に関する説明」

知的財産」には、様々なものがあります。
このうち、特許庁に出願をして権利取得の対象となるものが、「発明」、「考案」、「意匠」、「商標」です。

 

さて、本ブログで主題としている「商標」ですが、これらの「発明」などと性質を比較する際、よくなされる説明があります。

 

それは、

 

商標は、「選択物」である。

 

というものです。

 

発明や意匠などは「創作物」であるが、商標は「選択物」である
などと、説明されることも少なくありません。

 

もう少し突っ込んだものになると、
商標は、創作性のない「選択物」にすぎない
といった言い方がされる場合もあります。

 

このような説明からは、商標とは、創作物とは違って、すでに存在する文字等を選択するだけ(選択物)なので、それ自体に価値はないという印象を受けかねません。

 

たしかに、発明や意匠について特許や意匠登録を受けるためには、それらに新規性や進歩性・創作非容易性があることが条件となる一方、商標について商標登録を受けるためには、そのような条件は必要ありません。辞書に載っている一般的な語であっても、商標登録を受けることは可能です(※もちろん、識別力などの登録要件をクリアすることは必要です)。そういった意味では、この説明は核心を突いたものかもしれません。

 

しかし、商標の仕事に携わる商標弁理士としては、「商標は創作物ではない」とか、「商標は選択物にすぎない」といった説明がされているのを見聞きすると、よくカチンときます(笑)。おそらく、他の商標弁理士も、同じような気持ちを抱く方々は少なくないと思います。はっきり言って筆者は、このように商標について説明されるのが嫌いです。

 

だって、商標の考案って、とてもクリエイティブな作業ではないですか?

 

造語の文字商標であれば、今まで聞いたことのない斬新なワードも少なくありません。
ロゴマークの考案なら、まさに「デザイン」の過程そのものです。

 

辞書に載っているようなシンプルな文字であっても、あえてその文字を選ぶことには、事業者の想いや理念、こだわりが含まれていることでしょう。シンプルなシンボルマークを作成する場合も同様です。

 

商標登録などの商標実務も同じですが、「簡単なようで、簡単ではない」のが「商標」だと思います。そして、創作と同様に、商標の考案にも無限の可能性があると、筆者は思っています。

 

今まで聞いたこともないような語が、秀逸なネーミングとなることは少なくありません。そして、そのようなネームは「強い商標」ともなり得ます。

 

商標は、たしかに選択物なのかもしれません。ですが、創作性を発揮して商標を考案すれば、より「強い商標」になり得る。筆者は、そのように思っています。

 

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