そこそこ長い間、商標の仕事をしていて、よく不思議に思うことがあります。
それは、「商標登録とは〇〇〇である」という端的な説明が、世の中で意外とされていない点です。
もし、手元に商標に関する書籍があれば、ぜひ開いてみてください。
おそらく、どの本も「登録主義」とか「登録要件」に関してはズラズラと説明されていると思いますが、端的に「商標登録とは〇〇〇である」と書かれているものは、ほとんどないのではないかと思います。
いずれも、「商標登録」という語が、当たり前のように使われているのではないでしょうか。特許庁のウェブサイトにあるコンテンツですら、そのように見受けられます。
一方、商標登録を初めて知った事業者の方々や、初めて商標登録を検討しようと思う事業者の方々などからすれば、まず、「商標登録とはなにか?」というところから入るはずです。そして、経営者は忙しいので、手っ取り早く知りたいというのが実情でしょう。
しかし、本を見ても、ネットで調べても、端的な「商標登録とは〇〇〇である」という説明がなかなか見当たらないので、「?」のままとなることが多いのではないかと、個人的には懸念しています。なんとなく、「商標登録」という文字のイメージで理解するしかないという感じなのではないでしょうか。
幸い、Googleで「商標登録とは」をキーワードとして検索してみると、特許事務所のウェブサイトなどで、これが端的に説明されているものが散見されます。ただ、それらを実際に見てみると、その内容は意外とまちまちで、「結局、どういうことよ!?」と混乱してしまう可能性も、否定できないように思います。
まぁ、そもそも「商標登録」の一般的にありふれた定義というものがないので、ある意味仕方がないのかもしれません。筆者もいろいろ探してみましたが、あの広辞苑にすら書かれていませんでした。
このような現状ですので、おそらく、『「商標登録」と「商標権」は、何が違うの?』などといった疑問を持っている事業者の方々は、意外と少なくないと思われます。そして、このあたりをよく理解しないまま、商標登録を済ませているという方々も、実際には多いのではないかと推測されます。
さて、上述のように一般的な定義がありませんので、あくまで筆者のオリジナルになりますが、端的にいえば、商標登録とは以下のように言えるのではないかと思います。
厳密に言えば不正確かもしれませんが、概ね理解はしやすいのではないでしょうか。
商標登録の目的とは、要は「商標権」という権利を取得するためだと言えます。
よって、言い方を変えると、商標登録とは、
商標権を取得するために、特許庁にする手続
と言うこともできるでしょう。
最終目的は、その商標に関する商標権の取得です。
「商標権」が欲しいから「商標登録」をする、というロジックです。
よって、我々弁理士などが「商標登録しておきませんか?」と提案するのは、「商標権を取得しておきませんか?」という意味と実質的にイコールです。
そして、大事なのは、商標登録の事実よりも、その商標権の内容です。
商標登録自体ができても、たとえば指定商品や指定役務を間違えるなどして、取得した商標権が実際には使い物にならないということであれば、商標登録をした意味がありません。
普段からある物事に関わっている人にとっては「当たり前」のことであっても、それがまったく初めての人にとってはわかりにくかったりするものです。今回取り上げた、「商標登録とは〇〇〇である」という点についても、同様ではないかと思います。こういった点につき、世の中に対して、もう少し端的かつ丁寧に説明する機会を増やすべきではないかと、いち弁理士として感じた次第です。
というわけで、今回はいつもと少し趣向が異なりましたが、「商標登録とは〇〇〇である」という端的な説明が意外とされていないという点について、お話いたしました。
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