商標登録をしようと考えた当初には、その商標を使用する商品・サービスの構想がたくさんある場合も、少なくないと思います。そのため、願書には複数の区分を含めて、出願手続をすることもよくあることです。
一方で、特許庁の審査結果が出る頃(約半年後)には、その状況が変わっていることもあるでしょう。
無事に審査をパスして「登録査定」が出た段階で、「やっぱり、この区分はいらないかも・・・。」と思うこともあるのではないでしょうか。また、出願料(※3,400円+(区分数×8,600円))に比べると、商標登録料(※区分数×32,900円)は高額になるため、「正直、区分数が多いと登録料の支払いが苦しい・・・。」という状況になることも予想されます。
それでは、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することはできるのでしょうか。今回は、この点について少しお話したいと思います。
・「登録査定」が出た後でも、例外的に区分を減らす補正は可能
結論から言うと、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することは可能です。
この点、実は商標法や商標制度に詳しい人の方が、勘違いをしやすいかもしれません。
というのも、商標法では、手続の補正ができるのは、「事件が審査等に係属している場合に限られる」というのが、原則とされているからです。
(手続の補正)
第六十八条の四十 商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他商標登録又は防護標章登録に関する手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる。
※傍線は筆者による。
これによれば、「登録査定」が出た後は、すでに「審査に係属している場合」ではなくなっているため、原則的な考え方では、もはや区分を減らす補正手続はできないということになりそうです。
一方で、この条文の続く第2項では、以下のように規定がされています。
2 商標登録出願をした者は、前項の規定にかかわらず、第四十条第一項又は第四十一条の二第一項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。
これによれば、例外的に、商標登録料の納付と同時であれば、「区分の数を減らす補正」をすることができるとされているのです。
この規定のおかげで、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することが可能ということになります。
ちなみに、あくまで可能なのは「区分の数を減らす補正」であり、指定商品・指定役務に関する補正は認められませんので、誤解しないようにしてください。
・区分を減らして商標登録料を納付する際の注意点
ただし、区分の数を減らす補正は、「商標登録料の納付と同時に」しなければならない点には注意が必要です。
慣れない方にとっては、「同時に」のニュアンスがわかりにくいかもしれませんが、要はこれらの手続を一緒にせよということです。具体的にざっくり言えば、「商標登録納付書」と「手続補正書」の手続書類を一緒に提出せよという話となります。
「商標登録納付書」には、区分を減らした後に残った区分の数を記載した上で、それに応じた商標登録料を納付します。たとえば、元々は3区分あったのを、2区分減らして1区分にした場合は、1区分の商標登録料を納付すればOKです。
なお、この際、商標登録料納付書には、【その他】欄を設けて、「商標法第68条の40第2項の規定による手続補正書を同時に提出」のように記載せよとされています。特許庁の事務処理に混乱を生じさせないためにも、記載を忘れないように注意しましょう。
・予算が苦しい時こそ有効利用を!
「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することが可能であることを知らない場合、「(すべての区分の)商標登録料の支払いが苦しいので、納付手続はせずに登録自体を諦める」という、非常にもったいないことをしてしまう可能性があります。
こういった場合でも、眼目の商品・サービスが含まれる区分だけは、少なくとも商標登録を進めるべきでしょう。このような時こそ、区分を減らしての商標登録料納付が役立ちます。なお、区分を減らした場合でも「分割納付」が認められますので、これを併用することで、この時点での出費をさらに抑えることが可能です。
特許事務所や弁理士に商標登録を依頼している場合でも、登録査定が出ると、「このまま商標登録料を納付しますか、納付しませんか?」とか、「(納付する場合)分割納付を希望しますか、しませんか?」といったことは聞かれるかもしれませんが、登録する区分を減らすことについて聞かれることはあまりないのではないかと思います。必ずしもオールオアナッシングではなく、このような登録料納付の選択肢があることも、ぜひ覚えておいていただければと思います。
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