商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

【商標登録】「商標権の更新をし忘れた!なんとかならないの!?」という方へ

以前の記事でも述べたように、商標登録によって生じた商標権の「更新」については、たとえ更新期限が近付いても、運転免許証のような親切な案内通知は来ません。

 

astermarks.hatenablog.com

 

ですので、パスポートのように、ふと気付くと、「更新期限(商標権の存続期間の満了日)が、いつの間にか過ぎていた!」ということは、意外と「あるある」かもしれません。

 

せっかく思い出したのに、もう更新手続はできないのでしょうか?
更新期限からまだ数日しか経ってなくても、諦めるしかないのでしょうか?

 

今回は、この点について少しお話してみたいと思います。

 

・6か月以内に気が付けば、まだ更新手続は可能!

更新期限(商標権の存続期間の満了日)までに更新手続をしなかった場合、そこで即「詰み」というイメージがあるかもしれません。

 

しかし、まだ「セーフ」の可能性がありますので、諦めるのは早いです。
実は、「満了日の翌日から6か月以内」であれば、更新登録料に「割増登録料」を上乗せすることで、更新手続をすることが可能となっています。

 

ただ、「割増登録料」というと、一見それほどの金額ではない印象かもしれませんが、実際には更新登録料と同額となります。したがって、実質的に「倍額の更新登録料を支払うこと」が、この期間内に更新手続をするための条件となります。

 

ちなみに、現在の1区分の更新登録料(10年分一括)は「区分数×43,600円」ですので、倍額の「区分数×87,200円」を支払う必要があるということになります。

 

「ペナルティ付きの救済措置」と考えればやむを得ませんが、満了日から2~3日過ぎただけで料金が倍額になるというのも、心理的になかなかツライところです…。

 

なお、このいわゆる「追納期間」が過ぎてしまった場合は、商標権は消滅することになりますが、それから6か月以内であれば、一定条件の下で権利を回復できる場合があります

 

具体的には、「故意によるものでない」といった条件や、「回復手数料」をさらに納付するといった条件などを満たす必要があります。商標の案件の場合、現時点で、この回復手数料の金額は86,400円(※手続ごとに必要)となっています。

 

「救済の最終手段」とも言えるものであるため、かなりの手間と費用がかかってしまうことは覚悟が必要でしょう。「さすがに、ここまではちょっと・・・」という場合は、後に述べる再出願を検討してもよいかもしれません。

 

なお、回復手数料の免除を受けられる場合もあります。
このあたりの詳細については、以下の特許庁のウェブサイトをご参照ください。

 

www.jpo.go.jp

 

・更新手続がもうできないなら、1日も早く再出願を!

更新をし忘れていたことに気付いたのが、上述の追納期間や回復可能期間を過ぎた後である場合は、残念ですが、気持ちを切り替えなければなりません。

 

ただ、その商標を今後も保護していくために、できることはまだあります。
それは、その商標をもう一度出願して、再度の商標登録を受けるという手段です。

 

たしかに、「商標登録のやり直し」になりますので、それなりに費用も手間もかかることになりますが、大切な商標の保護を今後も継続するためには、背に腹は代えられないでしょう。

 

とはいえ、当然ながら、現時点を基準とした審査がまたありますし、「早い者勝ち」のルールが適用されることには変わりありません。よって、万が一、商標権が消滅してから再出願をするまでの間に、その商標と同じ商標、似ている商標が第三者によって出願されていた場合には、商標登録を受けられない可能性があります

 

ですので、再出願をする場合は、「1日も早く」という点が、より重要になると言えるでしょう。

 

なお、追納期間や回復可能期間に更新をし忘れていたことに気付いた場合でも、割増登録料や回復手数料が「高すぎる」と感じられる場合は、更新や権利回復をせずに、「あえて再出願をする」という方法もあります。再出願をした方が、費用を抑えられる場合もあるからです。ただし、この場合、上述のように「商標登録ができない可能性」というリスクを十分に踏まえた上で、選択する必要があるでしょう。

 

・再出願を選択する場合は、メリットとリスクをよく考えて

ところで、実務上は、更新を忘れていたかどうかにかかわらず、商標権の更新手続はせずに、「あえて再出願をする」というケースもあります。

 

たとえば、バラバラに取っていた商標登録をまとめて整理したい場合や、あらたに指定商品や指定役務を追加したい場合などが挙げられるでしょう。

 

現在、更新期限を迎える商標権(商標登録)の中には、1区分内に含められる指定商品・指定役務の範囲が「類似群7個まで」と制限されていた頃のものも少なくないはずです。現在は、この制限が「類似群22個まで」に変更されていますので、以前よりもかなり広い範囲で商標登録が可能です。そのため、現在の基準の下で、あえて商標登録を取り直すという戦略を選択することも、おかしいものではありません。

 

このような観点から、あえての再出願を検討するのもアリだと思います。

 

ただし、再出願を選択する場合、上述のように「商標登録ができない可能性」というリスクがあることには、十分な注意が必要でしょう。

 

できれば、現在の商標権の更新期限までに審査結果が出るくらいの早いタイミングで、再出願をしておくことがお勧めされます。こうしておけば、仮に再出願についての拒絶理由通知が出た場合には、現在の商標権をやっぱり更新するという「保険」がかけられます。

※この場合、再出願の内容は、現在の商標権の内容と完全に同一ではない等といった条件を満たすことが必要です。

 

なかなか判断が難しいところですので、「更新か再出願か」に迷った場合には、弁理士などの専門家にお早めにご相談されることをお勧めいたします。

 

なお、筆者の事務所のウェブサイトには、「商標登録の有効期限がわからなくなった」、「商標登録をした商標を忘れた」といったコンテンツを掲載しておりますので、よろしければご参照ください。

 

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