世の中には、長い間売れているロングセラーの商品やサービスがある一方で、あえて短期間しか販売・提供しないような商品やサービスもあります。
たとえば、シーズンものの商品。
これは、アパレル業界で特に多いのではないでしょうか。
お菓子やお惣菜に関する商品など、食品業界でも多いかもしれませんね。
また、期間限定の商品やサービスも、基本的には短期間のみの販売・提供ということになるでしょう。
このような短期間のみ販売・提供される商品やサービスに使用する商標は、商標登録をすべきでしょうか?
・出願をしても、通常、審査結果が出るのは約半年後
理屈から言えば、このような商標についても商標登録をした方が良いに決まっています。短期間の使用とはいえ、他者に模倣されるリスクはありますし、安心・安全にその商標を使える状態にしておくことが理想的だからです。
ただ、ご存知のように、商標登録出願をしても、すぐに登録となるわけではありません。登録は特許庁の審査をパスすることが条件であり、「審査待ち」の期間があります。最近は比較的早くなったとはいえ、審査結果が出るまでには通常、約6~7か月くらいはかかります。
ですので、たとえば期間限定の商品やサービスの場合、「審査結果が出る頃には、もうその商標は使っていないよ」という状況になることも考えられます。
使用開始直前に商標を決めたような場合は、このようになることが比較的多いかもしれませんね。
翌年もまた同じシーズンに使うような商標であれば、それでも商標登録をしておく意義は十分あるでしょうが、もう二度と使う予定がない商標であれば、これでは出願自体が無駄になってしまう可能性もあります。特に、商標の数が多ければ費用的な負担も軽くはありませんので、困ったものです。
なお、「早期審査」の制度を利用すれば、審査期間を早めることができますが、それでも最終的な登録完了までには2~3か月くらいはかかるでしょう。
では、使用開始までに、まだ時間的余裕がある場合はどうでしょうか。
使用開始前までに、出願をすれば審査結果が間に合いそうなケースです。
この場合、商標登録をしておくにこしたことはないでしょうが、実際の使用期間が数ケ月しかないといった場合は、やはり費用対効果の面から、実際に登録までするかは悩ましい問題になろうかと思います。
いずれの場合も、自身の使用が終了した後で、他者にマネや模倣をされるリスクが考えられそうであれば、とりあえずは登録料を分納(前半5年分のみを納付)した上で登録しておき、様子を見るというやり方もあるでしょう。
結局のところ、いずれの場合であっても、費用対効果の観点から、商標登録出願、商標登録をするかどうかは、悩ましいというのが実情だと考えられます。
・十分な商標調査で対応するという手もある
この点、十分な商標調査を行なうことで対応する、という手もあるでしょう。
商標調査では、通常、その商標の「登録可能性」と「使用可能性」を検討しますが、ここでは「使用可能性」についての調査を重視します。
とりあえず、「自身の商標の使用行為が、他者の商標権を侵害していなければOK」という方針であれば、商標登録までしなくとも、この「使用可能性」に関する商標調査だけでも対応は可能です。使用の障害となる他者の商標権の存在の有無を事前に確認しておくことで、実際の商標使用時に、突然商標権侵害のクレームが来るなどのトラブルを回避することができます。
ただし、当然ながら、その商標が他者にマネされたりした場合には、基本的には有効な対応がとれないことになりますので、この点のリスクは覚悟しておく必要があります。
また、商標調査は使用開始前の1回だけでなく、自身が商標を使用している期間中は定期的に実施する必要があります。時間の経過とともに、問題となり得る他人の商標が出現する可能性も否定はできないからです。
なお、一般論としては、商標登録をしようがしまいが、その商標を使用する以上、商標調査は必須と言えます。いずれにしても、商標調査は必ず実施することを普段から心掛けてください。
特許事務所などの弁理士に、このようなケースの商標調査を依頼する場合、事情を説明した上で、調査報告では「使用可能性」についての見解をより厚くしてほしい旨のリクエストを、最初にしておくと良いかもしれませんね。
ちなみに、このブログでも何度か書いている気がしますが、商標調査の精度は、調査を実施する人の経験やスキルに大きく左右されます。弁理士に依頼すれば、誰に依頼しても同じ調査報告や助言が受けられるというわけではありませんので、注意が必要です。商標調査は、やはり商標分野が得意な弁理士に依頼した方が理想的だと思います。
また、どうせ弁理士にコンタクトをするのであれば、まずはそもそもの対応についての相談をするのが良いように思います。
・かかりつけの弁理士がいれば心強い!
業界や業種によっては、このように短期間のみ販売・提供される商品やサービスに使用する商標が、多数あるということもあるでしょう。
商標登録までしておくべきかどうかは、実際にはケースバイケースと言えますし、個別具体的な事情等も加味して検討すべきです。商標調査の結果が影響することもあるでしょう。しかし、商標実務に慣れていない一般の事業者が、これを自分で判断するのは難しいと思われます。特に、このような商標が多数ある場合は、とても大変でしょう。
こういった際に、商標登録の要否に関する相談や、使用可能性に関する商標調査をスムーズに依頼できる「かかりつけの弁理士」がいれば、とても心強いでしょう。
繰り返し相談をしたり、商標調査を依頼したりすることで、依頼人の事情や状況、業界についての弁理士の理解・知識もどんどん深まります。そうすると、より高いクオリティでの調査報告や助言が期待できるようになるはずです。
短期間のみ販売・提供される商品やサービスに使用する商標が多いといった事業者の方の場合は、ぜひ「かかりつけの弁理士」を見付けて、心強いパートナーにすることをご検討されてみてはいかがでしょうか。
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