商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「花粉」に関する商標登録を検索して愉しむ

とうとう今年も、花粉のシーズンがやって来てしまいました。
私も2、3日くらい前から、目の調子が悪くて困っています。

 

さて、日本人の4割が苦しんでいると言われる花粉症。
世の中には、様々な花粉対策の商品やサービスが存在していると考えられます。
そして、それらに使われている「商標」も、たくさんあるはずです。

 

そのような商標の中には、その構成中に「花粉」の文字が含まれているものも、少なくないことでしょう。

 

では、こういった商標のうち、どのようなものが商標登録されているのでしょうか。
今回は、この「花粉」に関する商標登録について、調べてみたいと思います。

 

・「花粉」の文字を含む商標の商標登録を調べてみる

それでは今回は、「花粉」の文字を含む商標について、どれくらいの数が商標登録されているのか、そして、具体的にどのような商標があるのかを調べてみましょう。

 

商標検索は、例によって「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用します。
今回も、検索方法は非常にシンプルですので、もしよろしければ、皆様も一緒に検索してみてください。

 

まずは、いつも通り「J-PlatPat」の「商標検索」にアクセスします。

 

ページが表示されたら、「商標(マーク)」にある一番上の検索項目「商標(検索用)」の「キーワード」の入力フォームに、「?花粉?」と入力します。

 

入力をしたら、画面一番下の「検索」ボタンをクリックすればOKです。

 

137件がヒット!
(※2024年2月15日現在)

 

う~ん、筆者が思っていたよりも、意外と少なかったですね。
なお、このうち現在出願中のものが1件あるので、登録商標の数としては136件と言えそうです。

 

・具体的な「花粉」に関する商標登録を見てみる

それでは、検索結果一覧に出てきた、「花粉」の文字を含む具体的な商標を見てみましょう。

 

全てを紹介するとさすがに量が多すぎるため、今回は筆者が気になった&気に入った一部の登録商標をざっくりとピックアップしてみます。

 

・「かふん\花粉」(登録第1650420号) 第30類
・「花粉」(登録第2530328号) 第9類、25類
・「花粉専科」(登録第3198060号) 第5類
・「カフンガード\花粉ガード」(登録第4229282号) 第32類
・「花粉ナビ」(登録第4495733号) 第11類
・「花粉クリーン」(登録第4681919号) 第24類
・「さよなら花粉ものがたり」(登録第4738152号) 第29類
・「必殺花粉仕事人」(登録第4778143号) 第30類、32類
・「花粉ブロッカー」(登録第4794585号) 第5類
・「花粉クリア」(登録第4891518号) 第30類
・「花粉破壊」(登録第4963802号) 第5類
・「花粉立入禁止」(登録第5098725号) 第5類
・「花粉バリア」(登録第5160868号) 第1類、5類
・「花粉キラー」(登録第5610698号) 第9類、16類、41類、44類
・「花粉ノックアウト」(登録第5646107号) 第5類
・「花粉シェルター」(登録第5646387号) 第36類、37類
・「花粉 鼻でブロック」(登録第5983924号) 第5類
・「花粉すっきりケア」(登録第5994310号) 第5類
・「花粉を水に変えるマスク」(登録第6006816号) 第5類
・「花粉検定」(登録第6075186号) 第41類、44類
・「花粉症バスターズ」(登録第6097314号) 第41類、44類
・「花粉やっつけ隊」(登録第6183570号) 第3類、5類
・「花粉革命」(登録第6222074号) 第3類、35類
・「さよなら花粉生活」(登録第6299849号) 第5類
・「花粉シールド」(登録第6355925号) 第5類
・「おうち花粉」(登録第6671085号) 第3類、10類、16類、21類

 

 

全体的に、シンプルながらもわかりやすいネーミングが多いですね。
中には、「花粉」そのものズバリの文字商標の登録もあります。
個人的には、「必殺花粉仕事人」がお気に入りです(笑)。

 

それにしても、ここまでウイルスとか害虫などと同じような扱いをされていると、さすがに少し花粉が気の毒に思います。

 

・商標登録が拒絶された「花粉」の文字を含む商標

ところで、ご存知のように、商標登録が認められるためには、その商標が自他商品役務の識別標識として機能するものであることが必要です。識別力のない商標、すなわち、その商品やサービスの品質・特徴・内容などを普通に表すにすぎないものである場合、商標登録は認められません

 

「花粉」の文字を含む商標は、上掲の登録例のようにシンプルでわかりやすいものが多いことから、商標登録出願をしても、特許庁の審査で識別力が否定されるケースも少なくないと予想されます。

 

実際に過去の審査例を調べてみると、予想通り、かなりの数の商標が登録拒絶となっていました。一例としては、以下のような商標があります。

 

・「花粉快適」 第30類
・「花粉快調」 第30類
・「さよなら 杉花粉」 第29類、30類、31類、32類
・「杉花粉ドリンク」 第5類、32類
・「花粉退治」 第32類
・「花粉クリーン」 第32類
・「花粉カットジュース」 第32類
・「花粉プロテクトコート」 第25類
・「花粉」 第5類
・「花粉撃退」 第30類、32類
・「花粉バリアー」 第25類
・「花粉サプリ」 第29類、30類、32類
・「花粉とるとる」 第5類
・「花粉がつきにくいマスク」 第5類
・「花粉ダブルブロック」 第5類
・「花粉顔でブロック」 第1類、5類
・「花粉顔でガード」 第1類、5類
・「花粉症サプリ」 第5類
・「花粉レスキュー」 第3類、5類
・「花粉・PM2.5除去住宅」 第36類、37類

 

「さすがに、これはしょうがない」というものもあれば、上掲の登録例と比較して「なぜダメなのだろう?」と思うようなものもありますね。同じ商標でも、区分によって登録できたものとできなかったものもあるようです。

 

個人的には、「花粉 鼻でブロック」は登録になったのに、「花粉顔でブロック」は登録拒絶となっているのが興味深いですね。理由がよくわかりません。

 

なお、最近は少し傾向が変わってきたものの、10年前くらいから特許庁の審査における識別力の判断がだいぶ緩くなっていた気がするので、そのあたりの影響もあるかもしれません。昔、2000年代半ばくらいまでは、識別力の判断はかなり厳しかった印象があります。識別力がギリギリ、微妙と考えられそうな商標が登録されているのは、おそらく、この10年くらいの間に特に多いと思われます。

 

また、登録拒絶になった商標の中には、意見書の提出や、拒絶査定不服審判の請求をしていないものも少なくありません。これらの商標の中には、根気強く反論をしていれば登録が認められたものもあるであろうと思われます。

 

・「花粉」に関する商標の裁判例

なお、「花粉」に関する商標の裁判例として、「花粉のど飴事件」(東京地裁平成15年6月27日(平成14年(ワ)10522))があります。

 

かなり興味深い事件で、今読むと裁判所の判断に「えっ!?」と思われるかもしれません。よろしければ、ご参考にしてみてください。
ちなみに、今から20年以上前の事件なので、現在であれば結論が変わった可能性はあると思われます。

 

というわけで、今回は、「花粉」の文字を含む商標について、どれくらいの数が商標登録されているのか、そして、具体的にどのような商標があるのかを調べてみました。

 

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