商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「令和」の文字を含む商標は商標登録できる?

一昨日、今年も「M-1グランプリ」が開催されました。
今回の優勝者は、「令和ロマン」というコンビだったようです。

 

コンビ名に、現元号の「令和」が入っているのは、昭和生まれの筆者からすると、とても新鮮な感じがします。いかにも、「新世代」という印象を受けますね。

 

さて、「令和ロマン」は「令和」と「ロマン」の語を組み合わせたコンビ名と考えられますが、同じように「令和」と何らかの語を組み合わせた商品名・サービス名などの「商標」も、現在では世の中に多く存在していると考えられます

 

このような「元号を含む商標」は、商標登録をすることができるのでしょうか?
今回の記事では、この点について少しお話してみたいと思います。

 

・「元号」の商標登録に関する基本的な考え方

商標法では、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」については、商標登録が認められないとされています(第3条第1項第6号)。

 

そして、特許庁編纂の「商標審査基準」では、これに該当するものの一つとして、以下のように説明がされています。

 

4.元号を表示する商標について
 商標が、元号として認識されるにすぎない場合は、本号に該当すると判断する。
元号として認識されるにすぎない場合の判断にあたっては、例えば、当該元号が会社の創立時期、商品の製造時期、役務の提供の時期を表示するものとして一般的に用いられていることを考慮する。

 

これはつまり、元号そのものについて商標登録をしようとしてもダメよということを意味します。「令和」とか「平成」を商標出願したとしても、基本的に商標登録は認められません。

 

実は、この「商標審査基準」、以前は以下のように書かれていました。

 

4.現元号を表示する商標について
 商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。

 

これだけ読むと、わざわざ「現元号」と書かれていることから、「現元号」は該当するけれど、「旧元号」なら該当しないと解釈することもできなくもありません。

 

そのため、元号が「平成」から変わるよという話が出てきた2018年頃に、「じゃあ、新しい元号になったら、「平成」を商標登録できるの?」という疑問が、業界の内外で生じて話題になったわけです。

 

この点、特許庁も気になったのか、2018年6月22日には以下の記事を掲載しています。

www.jpo.go.jp

 

これによれば、「元号元号であるか否かを問わない。)として認識されるにすぎない商標は、・・・商標登録を受けることはできません。」と言っており、「現元号」ではない「元号」であっても、基本的には商標登録はできないことを明確にしています。(※元々、特許庁ではこのような運用がなされていましたが、誤解が生じないようにという配慮からの記事だったのでしょう。)

 

このような経緯を経て、「商標審査基準」も現在の上記内容に変更となった次第です。
ちなみに、実際には「明治」とか「大正」の商標登録も見受けられますが、これらは例外的であると考えるべきでしょう。

 

ちなみに、商標見本とする文字をかなりデザイン化するなどすれば、元号そのものについても商標登録ができる場合もありますが、他者が元号として使用する行為に対して、商標権を行使することは認められません(当たり前ですが・・・)。

 

・「元号を含む商標」の場合は?

上述のように、「元号」そのままの商標の場合、基本的に商標登録は認められません。
では、たとえば「令和〇〇〇」のように、商標の一部に元号を含む場合はどうでしょうか。

 

結論から言うと、「ケースバイケース」となります。
すなわち、「〇〇〇」の部分の文字次第ということになります。

 

より具体的には、この「〇〇〇」の文字部分に識別力が認められるかどうかという話になります。なお、識別力は、指定商品・指定役務(※商標登録をしようとする商品・サービス)との関係で判断されます。

 

たとえば、指定商品を「ケーキ」とする「令和ケーキ」については、「ケーキ」の部分に識別力が認められず、かつ「令和ケーキ」全体としても識別力がないと考えられますので、商標登録は認められないということになります。

 

一方で、たとえば、江崎グリコ株式会社の「令和ポッキー」には、実際に商標登録が認められています(登録6590182号)。「ポッキー」は指定商品「菓子」等との関係で、識別力を発揮できると考えられるからですね。「令和ポッキー」全体としても、識別力があると言えるわけです。

 

つまり、識別力のある語との組み合わせなどであれば、「令和〇〇〇」といった商標を商標登録することは可能ということになります。

 

なお、当然のことながら、「令和〇〇〇」を商標登録したからといって、他者が「令和」を元号として使う行為に対して、商標権を行使することは認められません。

 

・「令和」を含む商標の商標登録の数はどれくらい?

ちなみに、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で調べたところによれば、2023年12月26日現在、たとえば「令和〇〇〇」のように、「令和」の文字を含む商標(※デザイン化された「令和」も含む)の商標登録は、115件あるようです。

 

多いのか少ないのかよくわかりませんが、これらの大部分が、令和元年(2019年)に出願されており、ここ数年はポツポツといった感じのようですね。

 

「令和」ももう4年以上経っているためか、商標の一部に採用するという流行も一段落しているといったところでしょうか。ちなみに筆者は、いまだに「令和」の読み方のアクセントが、「昭和」と同じなのか、「レイ」の音を強めるのか悩んでいます(笑)。

 

というわけで、今回の記事では、「令和」のような元号や、「令和〇〇〇」のように元号を含む商標が商標登録できるのかという点を、少しお話しました。

 

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