ある特許事務所や弁理士法人に商標登録の代理を依頼したことがあるけれど、次からは依頼先を変えたいということがあるかもしれません。
その理由は様々だと思いますが、これまでの依頼先の対応や仕事に不満があるからという場合も、おそらく少なくはないでしょう。私も実際に、そのような話を耳にすることがあります。
ただ、ほとんどの場合、それが具体的に誰であるとか、どこの事務所であるといった話まではされません。さすがにその点は、気を遣われているのでしょう。
ですが、実は、「商標登録の代理を依頼した弁理士等」については、調べようと思えば、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を用いて、簡単に調べることができます。ここに格納されている商標データには、それぞれの商標登録出願の「代理人」についても、しっかり記録されているのです。
具体的な調べ方は、まず、その相談者の名前や会社名で商標検索をして、保有している登録商標をリストアップします。そして、それぞれの商標について、「経過情報」や「公報表示」の画面でデータを確認することで、その商標登録出願の「代理人」がわかります。
一般的に、これらに「代理人」として表示されるのは、依頼をした(1)弁理士の個人名、(2)弁理士法人の名称(特許業務法人の名称)、(3)弁護士の個人名となります。
弁理士の名前がわかれば、「弁理士ナビ」を使うことで所属する特許事務所は簡単にわかりますし、代理人が弁理士法人(特許業務法人)となっていれば、それがそのまま依頼先ということになります。
さて、新規の事業者から相談などがあった場合、弁理士は十中八九、その事業者の保有登録商標やそれらの出願における代理人を調べるものです。ですから、できるだけ隠したいという気持ちも心理的にはよくわかりますが、これまでの依頼先は隠せないとご理解いただいていた方がよろしいかと思います。
注意が必要なのは、たとえば、これまでは「激安事務所」に商標登録を依頼していて、次からは一般的な特許事務所に依頼したいと考えているような場合でしょう。なぜなら、一般的な(価格を売りにしていない)特許事務所などでは、激安事務所への依頼歴がある新規の相談者は、心理的に「警戒される」というのが実際のところだと思われるからです。
相手がこれまで激安事務所に依頼していたことがわかると、弁理士としては、このまま依頼を受けた場合、「値切られるのではないか」とか、「後から料金でもめるのではないか」とか、「ちゃんと正規の料金を支払ってくれるのだろうか」といった不安が、どうしても生じると言わざるを得ません。特に、独立系弁理士の場合は、その傾向が強いと思われます。これは心理的に仕方がないでしょう。
また、「きっと料金を重視するような事業者なのだろうから、うちもまたすぐに変えられてしまうのだろうな…」などとも、思われてしまうかもしれません。
このような点で、最初の段階からネガティブな印象を持たれたり、弁理士のモチベーションが下がっていたりと、思わぬところで「損をしてしまう可能性」があることは否定できないでしょう。場合によっては、何かと理由を付けて「断られる」ということもあるかもしれません。
逆に、たとえば、ネット上では営業活動をほとんど行っていないような、同業者内で評判の良い弁理士や弁理士法人への依頼歴があると、最初の段階から一目置かれたり、歓迎されたりするということもあるかもしれません。
弁理士も人間ですから、やはりいろいろ考えるのが現実だと言えます。
事業者の方々が、商標登録の代理を誰(どこ)に依頼するかは自由です。
ですが、その依頼先は、調べようと思えばすぐにわかります。
上述のように、その選択が、思わぬところで将来に影響を与える可能性があるかもしれないということも、覚えておいて損はないのではないかと思います。
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