商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

昨年2022年の商標登録出願の数

日本で、どれくらいの数の商標登録出願がされているかご存知でしょうか?

 

特許庁による「特許行政年次報告書2023年版」の統計によれば、昨年2022年にされた商標登録出願の数は、17万275件だったということです。

 

1日平均にすると、だいたい毎日約466件が出願されていることになります。

 

ちなみに、2021年は18万4631件でしたので、昨年は約14,000件減ったことになります。やはり、昨今の厳しい社会情勢による影響でしょうか。

 

さて、この「17万275件」という数字、皆様には多いと感じられたでしょうか。それとも、少ないと感じられたでしょうか。

 

参考のために記しておくと、昨年2022年の中国での商標登録出願件数は、約751万件だったそうです。とても多く感じますが、これでも昨年はかなり減っていて、2021年は約945万件だったと言われています。はっきり言って、圧巻の数だと思います。

 

なお、2021年の統計になりますが、米国では約66万件、韓国では約28万件の商標登録出願がされたということです。そもそもの規模が大きい中国はともかく、お隣の韓国と比較すると、日本の件数は若干少ない印象がありますね。

 

また、我が国では、いわゆる大企業による出願が多いのが実際のところです。
上述の「特許行政年次報告書2023年版」によれば、2022年の日本における中小企業による商標登録出願数は、74,010件だったということです。出願者数としては、約35,000とのこと。

 

少し古い統計になりますが、日本の中小企業の数は約358万社あると言われています。
そうすると、あくまで単純計算にはなりますが、実に中小企業の約1%しか商標登録出願をしていないということになりそうです

 

もしかすると、中小企業の約1%しか商標登録制度を利用していないのが現状という可能性も、あり得る話なのかもしれません。

 

このように見てみると、やはり我が国の商標登録出願の数は、「かなり少ない」と言わざるを得ないように思われます。

 

では、その理由として何が考えられるでしょうか?

 

あくまで私見ですが、やはり我が国では、そもそも「商標登録制度」が事業者の間であまりよく知られていないのが、最も大きな原因ではないかと感じています。

 

また、たとえ「商標登録制度」自体については知られていても、その重要性や意義が正しく理解されていないという一面もあるように思います。

 

重要性や意義がきちんと理解されていないと、「わざわざ費用をかけてまでするのはちょっと・・・」という流れになってしまうのは必然でしょう。商標登録の役割をよく理解していれば、本当は「むしろ安い」くらいに感じるほどの金額なのですが・・・。もっとも、景気の厳しい状況が続く世の中ですので、「できるだけお金をかけたくない」という事業者の気持ちも、よくわかります。

 

ただ、この点、おそらく「商標登録をしないリスク」についても、事業者の間であまり十分に理解されていないのだと思われます。これがわかっていれば、商標登録が決して優先度の低いものとは思えないはずだからです。そして、「できるだけお金をかけたくない」などとも言っていられないはずです。

 

災害対策でもそうですが、日本人は「ああなったら危ない」とか、「こうなったら大変だ」とは騒ぐものの、実際に対策のために行動をする人は少ないと言われています。商標登録の場合も、もしかすると同様にこうした一面があるのかもしれません。

 

私は、「商標登録制度」を世の中で広く知ってもらうことも、我々弁理士の仕事だと思っています。本記事のような情報発信もそのためのものですが、なかなか多くの人に見てもらうのは難しいと痛感しています。難しいミッションではありますが、今後も続けられる限り、このような情報発信をコツコツと積み重ねていけたらと思っています。

 

なお、当事務所のコンテンツに「商標登録とは?」、「商標登録をしないとどうなるのか」がありますので、もしよろしければご参照ください。

 

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