商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

病院名の商標登録を検索して愉しむ

以前の記事では、近年、クリニック名に関する商標登録出願の件数が、年々増加している傾向があるというお話をしました。

また、実際に、どのようなクリニック名が商標登録されているのかや、どのくらいの商標件数があるのかといった点を、ざっくりと検索して見てみました。

 

ここで、

 

じゃあ、病院名の場合はどうなの?

 

と思った方も、少なくないかもしれません。

 

そこで今回は、「病院」の名称に関する商標登録を検索して、どれくらいの数が登録されているのかなど、ざっくりと調べてみることにしましょう。

 

・「病院」と「クリニック」は異なる医療機関

商標の検索の話に入る前に、予備知識として一点お話したいと思います。

 

私たち一般人が風邪を引いたり、体調が悪かったりする場合、「病院に行ってきます」とか「病院に行ってきたら?」などといった会話をすることが、よくあるのではないでしょうか。

 

おそらく、医療機関のことはすべて「病院」と言っている人も多いと思います。

 

しかし、医療法によれば、「病院」には明確な定義があり、「診療所(クリニック、医院)」とは別の医療機関とされています。詳細はここでは取り上げませんが、規模や診療内容の違いによって、それらが分類されることになります。

 

ですので、厳密に言えば、「病院に行ってきます」と言って、近所の「診療所(クリニック・医院)」に通院するというのは、正確ではないことになります。まぁ、個人的には、日常会話においてこの点にこだわる必要は全くないとは思いますが(苦笑)。

 

ちなみに、ざっくりですが、日本にある「病院」の数は約8,000で、クリニックなどの「一般診療所」の数は約10万ということです。

 

「病院」となるためには、ある程度の規模の大きさや、診療内容の広範性・充実性が求められますので、医師が一人で開業しているような「一般診療所」よりも数が少なくなるというのは、ある意味当然かもしれません。

 

医業業界の方からすれば常識的な話ではありますが、一般の方(特に、いつも健康な方)にはあまり知られていないかもしれないと思われましたので、以上、少し補足してみました。

 

・病院名の商標検索をする前に予測できること

このように、「病院」の方が、クリニックなどの「一般診療所」よりもかなり少数である点を踏まえると、あることが予測できます。

 

それは、病院の名称の商標の方が、クリニックの名称の商標よりも、数としては断然少ないであろうという点です。そうであれば、実際に商標登録や商標出願がされている件数についても、同じことが言えるでしょう。

 

最近のクリニック名は、他院との差別化やブランド育成のために造語的な名称が付けられるケースも多いように感じられます。造語的な名称であれば、商標登録の意義はより一層大きくなるというのは、以前の記事でもお話したとおりです。

 

一方で、病院名は、依然として硬派というか厳格というか、奇をてらったような名称はまず見かけない印象があります。「〇〇〇(地域名)+病院」といったような、商標的には識別力が弱いと言えそうな名称のものが比較的多いのではないでしょうか。クリニックとは異なり、商標登録のきっかけに接する機会が、そもそも少ないと言えるかもしれません。

 

この点からも、「病院名の商標登録って、やっぱり少なそう」と思料されます。

 

・「病院名」に関する商標登録の検索方法

それでは、実際に「病院名」に関する商標登録を検索してみましょう。
予測したとおり、その数は少ないのでしょうか。

 

1.まずは、いつものように「J-PlatPat」にアクセスします。
※リンク先は、ブラウザの「新しいタブで開く」などで開いてください。

 

2.次に、「商標(検索用)」の検索項目の「キーワ-ド」の入力フォームに、「?病院」と入力します。

 

3.このまま一番下にある「検索」ボタンを押しても良いのですが、この条件では、「医療分野とは関係のない商標」もヒットしてしまいますので、条件を設定します。
今回は、中段にある「商品・役務」の入力フォームに、検索項目が「類似群コード」となっていることを確認して、「42V02」と入力します。
※「42V02」というのは、「医業」に関する役務(サービス)が分類されているコード(類似群コード)となります。この条件を加えることで、医療機関に関連した商標が主にヒットするようにしています。

 

4.入力ができたら、一番下にある「検索」ボタンをクリックします。

 

188件がヒット!!
(2023年7月25日現在)

 

う~ん、やはり微妙な数ですね(笑)。

 

これらのうち10件が、現在審査中・審査待ちの状態のようですので、実際に商標登録がされている病院名の数としては、約180件という感じです。

 

なお、この検索方法では、たとえば「〇〇〇病院□□□」といった商標はヒットしませんので、実際の件数はもうちょっと多いはずです。また、検索された商標の中には多少のノイズも紛れていると考えられますので、正確性は保証できかねます。予めご了承ください。

 

検索結果のリストをざっと見てみると、有名な大学病院もあれば、ちょっと攻めた感じのユニークな病院名もいくつか見受けられます(実在するのでしょうか?)。

 

ただ、クリニック名の商標を検索した際には約1,500件がヒットしたことを考えると、やはり病院名の商標というのは全体的に少ないと言えそうです。

 

しかし、だからといって、病院名を商標登録することの重要性が低いというわけではありません。この点は、誤解しないようにしてください。一般的なクリニックよりも規模が大きいということは、商標のトラブルに巻き込まれた際の影響も、それだけ大きくなると考えられます。

 

なお、当事務所のコンテンツに、「お医者さんのための商標登録」があります。
よろしければ、こちらも併せてご参照ください。


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