以前の記事で、自分自身が商品となる職業や事業においては、自分自身をブランド化すること、すなわち「パーソナルブランディング」が重要になり得るというお話をしました。
なお、企業や組織に属さない人による自分自身のブランド化のことは、パーソナルブランディングではなく「セルフブランディング」と言う傾向があるようですので、上述の記事は、「セルフブランディングと商標登録」とした方が適切だったかもしれません(すみません)。
いずれにしても、そのやり方の一つとしては、「オリジナルの肩書き」を作ることが考えられます。実際に、講師、コンサルタント、カウンセラー、医師、士業などの「先生」と呼ばれる人たちの中には、そのような肩書きを用いて、顧客獲得のために日々努力されている方も少なくないでしょう。
そして、このような「〇〇〇講師」、「〇〇〇コンサルタント」、「〇〇〇カウンセラー」、「〇〇〇△△士」といった「オリジナルの肩書き」を同業者にマネされないように、「商標登録」が利用されることも少なくありません。
ところで、こういった先生たちの「オリジナルの肩書き」には、上述のように個別の職業名を入れたものもあれば、もっとシンプルに「〇〇〇先生」としたものもあるのではないかという気がします。
というわけで、今回はこのような「〇〇〇先生」商標の商標登録を検索して、どのくらいの登録数があるのかなどを、ざっくりと調べてみたいと思います。
・「〇〇〇先生」の商標登録の検索方法
このブログの記事をよくご覧いただいている方なら、もう説明は不要かもしれませんが(笑)、今回も無料データベース「J-PlatPat」を利用して調べます。
※リンク先は、ブラウザの「新しいタブで開く」などで開いてください。
今回はシンプルに、検索項目「商標(検索用)」の「キーワード」の入力フォームに、「?先生」と入力してみましょう。入力ができたら、一番下にある「検索」ボタンをクリックします。
267件がヒット!!
(※2023年8月28日現在)
あれれ~?思っていたより少ない印象ですね。
このうち22件が、現在審査中または審査待ちの状態になっていますので、商標登録が完了しているものの件数としては、245件くらいということになりそうですね。
・教育分野で使われる商標に絞ってみると・・・
上述の検索方法では、単純に「〇〇〇先生」という構成の商標を検索しただけですので、各商標の指定商品や指定役務はバラバラです。つまり、様々な商品・サービスに使われる商標がひっくるめられて、検索結果に出ています。
では、このうち教育分野で使われる商標に絞ると、どれくらいの数があるでしょうか?
そこで、検索画面の中段にある「商品・役務」の検索項目が「類似群コード」になっていることを確認して、「キーワード」の入力フォームに「41A01」と追加で入力してみましょう。
この「41A01」というのは、「技芸・スポーツ又は知識の教授」といったサービスが分類されている類似群コード(商品・サービスのグループコードのようなもの)となります。教育分野で使う商標であれば、この類似群コードが付されるサービスの指定は必須と言えます。
つまり、条件を追加して、「技芸・スポーツ又は知識の教授」といった教育分野に関連するサービスを指定している「〇〇〇先生」という商標を検索してみます。
「41A01」の追加入力ができたら、「検索」ボタンをクリックしてみましょう。
98件がヒット!!
(※2023年8月28日現在)
このうち13件が、現在審査中または審査待ちの状態になっていますので、商標登録が完了しているものの件数としては、85件ということになりそうですね。
有名な、株式会社ベネッセコーポレーションの「赤ペン先生」などが見受けられます。
興味深いのが、2019年頃から、急に「〇〇〇先生」商標に関する出願が増えているという傾向が見られることです。98件中、なんと54件が2019年以降に出願されています。特に2021年以降が多い印象です。
近年になって、パーソナルブランディングやセルフブランディングがより重要視されるようになった、ということでしょうか。それとも、単純に、ここ数年で「〇〇〇先生」という商標が流行しただけなのでしょうか。もしかすると、コロナ禍によって何らかの影響があったという可能性も考えられるかもしれません。
いずれにしても、こういった「〇〇〇先生」商標の商標登録出願が、ここ数年で急増しているという点は、留意をしておいた方が良さそうです。
・さらに個人名義の商標に絞ってみると・・・
上述の講師、コンサルタント、カウンセラー、医師、士業などの「先生」が、セルフブランディングの一環として「〇〇〇先生」といったオリジナルの肩書きを使う場合、その多くは個人名義で商標登録をすることになろうかと思います。
では、上述の検索結果を、さらに個人名義によるものに絞ると、どれくらいの数になるのでしょうか。
この条件を追加するには、検索で「除外キーワード」のオプションを利用します。
まず、J-PlatPatの検索画面の下の方に、「除外キーワード 検索から除外するキーワードを指定します。」と表示されている部分がありますので、右側の「開く +」をクリックします。
ここをクリックすると、これまでと同じような検索フォームが下に展開されます。
初期状態では「検索項目」が「商標(検索用)」になっていますので、この部分をクリックして「出願人/権利者/名義人」を選択し、変更します。変更ができたら、「キーワード」の入力フォームに「?会社? ?法人?」と入力します。
つまり、さらに条件を追加して、「技芸・スポーツ又は知識の教授」といった教育分野に関連するサービスを指定している「〇〇〇先生」という商標のうち、「会社」または「法人」が付く名義人によるものを除外して検索してみます。
「?会社? ?法人?」の追加入力ができたら、「検索」ボタンをクリックしてみましょう。
27件がヒット!!
(※2023年8月28日現在)
このうち3件が、現在審査中または審査待ちの状態になっていますので、商標登録が完了しているものの件数としては、24件ということになりそうですね。
数としては、かなり少ないと言えるかもしれません。たった24件です。
ただ、やはり2019年頃から、急に出願が増えています。
2023年は一転して少ない印象ですが、今後はどうなっていくのでしょうか。
登録例が少ないから、商標登録までするのは無駄なのであろうと考えるか。
それとも、少ないからこそ、逆にチャンスととらえるか。
まさに、「セルフブランディング戦略」にかかわってきそうな話です。
もちろん、これは「教育分野」に使用する商標に限るものではありません。
ちなみに、(今の若い人たちは知らないかもしれませんが)かの有名な「金ピカ先生」も、佐藤忠志先生ご本人によって、2002年に商標登録がされていますが、昨年2022年に更新手続がされず、現在は登録が消滅となっています。ネット情報によると2019年に亡くなられたとのことですので、それが主な原因でしょう。
商標登録をすると、このように記録としては残り続けるという点もあります。
自分自身の人生の足跡を残すという観点から、自分が使ってきた、大切にしてきた肩書きを(思い出として?)商標登録しておくというのもアリなのかもしれません。
なお、当事務所のウェブサイトには、「教室・習い事・スクールのための商標登録」、
「士業の先生のための商標登録」、「先生・コンサルタントのための商標登録」、「お医者さんのための商標登録」といったコンテンツもございますので、ぜひご覧ください。
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