弁理士が、その業務において最も関わりの強い他士業といえば、おそらく「弁護士」ではないかと思います。私自身も、「協働」という点においては、同業の弁理士よりも、弁護士さんと関わる機会の方が多いかもしれません。
特に、商標権侵害に関する事件では、弁護士さんとタッグを組んで対応するのが一般的です。
弁護士さんは、なんと言っても法律のプロフェッショナル。
法律上の「権利」の大切さや、その重要性を十分に理解されています。
それなら、「商標権」についても、きっと重視しているに違いない!
自身の法律事務所の名称などを、商標登録している弁護士さんは多いに違いない!
そんな気がしませんか?
では、実際のところはどうなのでしょうか。
というわけで、今回は「法律事務所」の名称に関する商標登録を検索して、どれくらいの数が登録されているのか、ざっくりと調べてみましょう。
・「法律事務所」の名称に関する商標登録の検索方法
これまでに何度も書いているので、「またかよ」という声が聞こえてきそうですが(苦笑)、「法律事務所」の名称に関する商標登録を調べるには、いつもの「J-PlatPat」を利用します。
※リンク先は、ブラウザの「新しいタブで開く」などで開いてください。
検索方法は、もうおわかりですね。
今回はとりあえず、「商標(検索用)」の検索項目の「キーワ-ド」の入力フォームに、「?法律事務所?」と入力します。入力ができたら、一番下にある「検索」ボタンをクリックしましょう。
224件がヒット!!
(※2023年7月11日現在)
おお、やはり結構多いですね。
このうち13件が、現在審査中・審査待ちの状態のようですので、実質的な商標登録の数としては、約210件というところでしょうか。
具体的な名称については、各自で検索結果のリストをチェックしてみてください。
知財分野でも有名な、あの大手法律事務所の名称も、1996年から登録されていますね。
やはり古くからある商標登録は、業界で一度は耳にしたことがあるような有名な法律事務所の名称が多い印象です。
ちなみに、同様に「?弁護士法人?」で検索してみると、
39件がヒット!!
します。
このうち、先程検索した「法律事務所」の文字が含まれるものを除外すると・・・
21件がヒットします。
ちなみに、このうち2件が現在審査中・審査待ちの状態です。
弁護士さんの事務所名に、必ず「法律事務所」が含まれるとは限らないということですね。
なお、「?弁護士事務所?」で検索すると、3件の商標登録がありました。
というわけで、ざっくり調べた感じでは、「法律事務所」の名称に関する商標登録の数としては、約230件程度といった感じでしょうか。
※注:あくまで、ざっくりと調べた結果ですので、正確性は保証できかねます。
実際には、もう少し多いと思われます。
・「法律事務所」の名称にも、識別力の壁がある
ネットで調べたところ、日本には約17,000~18,000の法律事務所があるようです。
先程、約220のヒットで「結構多い」と書きましたが、このような法律事務所の総数から考えると、
めちゃくちゃ少ないのでは?
と思われた方もおられるかもしれません。
たしかに、全体的な割合としては、かなり少ないと言えます。
しかし、商標登録が認められるためには、その商標に「自他商品・役務の識別力(以下、「識別力」)」があることが条件となるのは、法律事務所の名称の場合も同じです。
※ちなみに、識別力がないとされるケースについては、特許庁ウェブサイト「出願しても登録にならない商標」に詳しく解説されていますので、こちらをご参照ください。
すなわち、たとえば、「地名+法律事務所」とか、「ありふれた氏+法律事務所」といった名称を普通に表した商標の場合は、識別力がないことを理由に、原則として商標登録は認められないと考えられます。
そして、実際のところ、法律事務所の名称にはこういったタイプの名称が非常に多いことが推測されます。
そうすると、法律事務所の名称には、そもそも商標登録の対象となり得るものがそう多くはないことが考えられそうです。実際、出願してみたけれども、識別力がないという理由で登録拒絶となったと思われる法律事務所の名称からなる商標は、J-PlatPatでも多数確認できます。
・商標登録を検討すべき「法律事務所」の名称とは?
では、商標登録に向いている法律事務所の名称とはどんなものでしょうか。
一つは、造語的な名称の場合です。
たとえば、花などの植物や、動物、自然物の名称などが含まれるものが挙げられます。
これらの語が含まれていれば、まず識別力は否定されないでしょう。
もう一つは、「地名+法律事務所」とか、「ありふれた氏+法律事務所」であっても、さらにこれらに識別力がある語が付加されているような名称の場合です。
たとえば、「キラキラ(地名)法律事務所」とか「押忍!(ありふれた氏)法律事務所」とか。具体例がちょっと適切ではないかもしれませんが(笑)。
なお、あきらかな地名とは言えない場合や、ありふれているとは言えない氏の場合も、登録が認められるチャンスはあるでしょう。たとえば、私の氏である「永露」は(多分)ありふれたとまでは言えないと思いますので、「永露法律事務所」を商標登録しようとした場合、登録が認められる余地はあるように思われます。
もっとも、商標登録をする意義を考えることも重要です。
現実的・実質的な費用対効果を考えることも、必要ではないかと思います。
とはいえ、商標登録をしておけば安心・安全なのは間違いありません。
たとえば、開業記念に自身の事務所名を商標登録しておくというのも、個人的には良いことだと考えます。商標登録がされると、自分の仕事に対するモチベーションも上がると思いますので。
そんな感じで、今回は、「法律事務所」の名称に関する商標登録を検索してみました。
ちなみに当然ですが、弁護士さんに関係する商標は、事務所の名称だけではありません。ロゴマークや、オリジナルのサービス名、パーソナルブランディングのためのオリジナルの肩書き名なども、商標登録の対象になり得ます。
ぜひ、ご自身の必要性に応じて、商標登録を上手く活用していただければと思います。
なお、当事務所のサイトにも、「士業の先生のための商標登録」のコンテンツがありますので、もしよろしければご参照くださいませ。
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