近年の社会構造の変化やコロナ禍の影響によって、最近、一人で事業を行なう「ひとりビジネス」が増えてきたと耳にします。
では、「ひとりビジネス」においても、商標登録は必要なのでしょうか?
このような疑問を持っている方も、少なくない気がします。
今回は、この点について少し述べてみたいと思います。
・商標登録の意義は、ひとりビジネスでも変わらない
商標登録は、大企業とか、事業規模が大きい企業だけに関係のある話だと考えている方も少なくないようです。
しかし、それは明らかな誤解であり、中小企業や個人事業主であっても、商標登録は身近で関係のある話ですし、その意義や重要性は変わりません。これは、「ひとりビジネス」であっても同様です。
よって、「商標登録をした方が良いかどうか?」という話であれば、「した方が良い」に決まっています(笑)。たとえ一人でビジネスを行なう場合であっても、それが事業であることに変わりはなく、商品・サービスに使用する文字やマークは立派な「商標」になるからです。
そして、これらの商標の安心・安全な使用を確保し、他者による同一・類似の商標の使用や登録を防止するためには、商標登録は強力なツールとなります。
・「ひとりビジネス」でネックになるのは費用面
ところで、よく「商標登録をするデメリットを教えてください」という質問をされることがあります。我々からすると、少し的が外れた(?)質問だと思うのですが、一般的には、メリット以上のデメリットなど考えられません。
せいぜい、それなりの費用がかかること、出願人の名称や住所が公開される(※最近では、SNSや業者のサイトに情報の一部が無断で転載されることもある)こと、将来的に無効や取消に関する請求を受けた場合に対応が面倒くさいことくらいではないでしょうか。
そう考えると、「商標登録はした方が良い」ということを理解していながら、なおも「ひとりビジネスに商標登録は必要か?」を悩む場合というのは、こういった点の中にその理由があるのかもしれません。
おそらく、その主たる理由は「費用」なのでしょう。
「ひとりビジネス」のように小規模で事業を行なう場合、できるだけ余分な費用をかけたくないと考えるのは普通だと思います。そもそも、「あまり費用をかけられない」ということも少なくないかもしれません。
結局のところ、問題は、『「ひとりビジネス」で小さく事業を行なっている場合でも、わざわざそれなりの費用をかけてまで商標登録をする必要があるのか?』という話に行き着くのだろうと考えられます。
・商標登録の費用は、「保険としての投資」と考えたら・・・
この点に関しては、様々な意見があるでしょうし、事業者ごとにもケ-スバイケースな話になってくるかと思われます。単純に「費用対効果」という点だけを考慮すれば良いというものでもありません。したがって、一概に答えを述べるのは難しいところです。
私個人の意見としては、たとえ「ひとりビジネス」であっても、これから先、将来的にもその商標をずっと使い続けて頑張っていくという意思があるのであれば、多少は費用がかかっても、商標登録はしておいた方が良いであろうと考えます。
他者による使用や登録を排除するためとか、ブランド育成の促進のためという目的ももちろんありますが、ひとりビジネスの場合は、「余計なトラブルに巻き込まれるリスクを極力減らす」という観点で、特に商標登録をしておく意義があると思います。
なぜなら、「ひとりビジネス」の事業者は一般的にとても忙しいからです。
一人なので、毎日やるべきことがたくさんあるはずです。
利益を生まない余計な仕事は極力減らしたいと思うのが本音でしょう。
この点、いざ商標に関するトラブルに巻き込まれると非常に面倒なことになります。
商標登録をしていない場合、その確率が高まるのは間違いありません。
特に、商標権侵害を他者から指摘された場合は、対応にかなりの時間・労力・費用を必要とせざるを得ない状況となることがほとんどです。
そうなった時のことを考えれば、多少費用がかかったとしても、自身の商標についてはしっかりと商標登録をして、安心・安全な使用を確保し、「余計なトラブルに巻き込まれるリスクを極力減らす」というのが望ましいのではないでしょうか。
要するに、「保険」をかけるようなものです。
何も問題がなかった場合には損をした気分になるかもしれませんが、それは結果論であって、商標登録をした意味が全くないというわけではないでしょう。これは「必要な投資」だったと考えていただくのがよろしいかと思います。
もちろん、最終的に商標登録をするかしないかを決めるのは各事業者の自由です。
ただ、「商標登録まではしない」という選択肢を選んだ場合であっても、その商標の使用が、他者の商標権を侵害することがないかを事前にチェックすることだけは必須と言えます。この点には、くれぐれもご注意ください。(弁理士に「商標調査(使用可能性調査)」を依頼できます。)
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