商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「花粉」に関する商標登録を検索して愉しむ

とうとう今年も、花粉のシーズンがやって来てしまいました。
私も2、3日くらい前から、目の調子が悪くて困っています。

 

さて、日本人の4割が苦しんでいると言われる花粉症。
世の中には、様々な花粉対策の商品やサービスが存在していると考えられます。
そして、それらに使われている「商標」も、たくさんあるはずです。

 

そのような商標の中には、その構成中に「花粉」の文字が含まれているものも、少なくないことでしょう。

 

では、こういった商標のうち、どのようなものが商標登録されているのでしょうか。
今回は、この「花粉」に関する商標登録について、調べてみたいと思います。

 

・「花粉」の文字を含む商標の商標登録を調べてみる

それでは今回は、「花粉」の文字を含む商標について、どれくらいの数が商標登録されているのか、そして、具体的にどのような商標があるのかを調べてみましょう。

 

商標検索は、例によって「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用します。
今回も、検索方法は非常にシンプルですので、もしよろしければ、皆様も一緒に検索してみてください。

 

まずは、いつも通り「J-PlatPat」の「商標検索」にアクセスします。

 

ページが表示されたら、「商標(マーク)」にある一番上の検索項目「商標(検索用)」の「キーワード」の入力フォームに、「?花粉?」と入力します。

 

入力をしたら、画面一番下の「検索」ボタンをクリックすればOKです。

 

137件がヒット!
(※2024年2月15日現在)

 

う~ん、筆者が思っていたよりも、意外と少なかったですね。
なお、このうち現在出願中のものが1件あるので、登録商標の数としては136件と言えそうです。

 

・具体的な「花粉」に関する商標登録を見てみる

それでは、検索結果一覧に出てきた、「花粉」の文字を含む具体的な商標を見てみましょう。

 

全てを紹介するとさすがに量が多すぎるため、今回は筆者が気になった&気に入った一部の登録商標をざっくりとピックアップしてみます。

 

・「かふん\花粉」(登録第1650420号) 第30類
・「花粉」(登録第2530328号) 第9類、25類
・「花粉専科」(登録第3198060号) 第5類
・「カフンガード\花粉ガード」(登録第4229282号) 第32類
・「花粉ナビ」(登録第4495733号) 第11類
・「花粉クリーン」(登録第4681919号) 第24類
・「さよなら花粉ものがたり」(登録第4738152号) 第29類
・「必殺花粉仕事人」(登録第4778143号) 第30類、32類
・「花粉ブロッカー」(登録第4794585号) 第5類
・「花粉クリア」(登録第4891518号) 第30類
・「花粉破壊」(登録第4963802号) 第5類
・「花粉立入禁止」(登録第5098725号) 第5類
・「花粉バリア」(登録第5160868号) 第1類、5類
・「花粉キラー」(登録第5610698号) 第9類、16類、41類、44類
・「花粉ノックアウト」(登録第5646107号) 第5類
・「花粉シェルター」(登録第5646387号) 第36類、37類
・「花粉 鼻でブロック」(登録第5983924号) 第5類
・「花粉すっきりケア」(登録第5994310号) 第5類
・「花粉を水に変えるマスク」(登録第6006816号) 第5類
・「花粉検定」(登録第6075186号) 第41類、44類
・「花粉症バスターズ」(登録第6097314号) 第41類、44類
・「花粉やっつけ隊」(登録第6183570号) 第3類、5類
・「花粉革命」(登録第6222074号) 第3類、35類
・「さよなら花粉生活」(登録第6299849号) 第5類
・「花粉シールド」(登録第6355925号) 第5類
・「おうち花粉」(登録第6671085号) 第3類、10類、16類、21類

 

 

全体的に、シンプルながらもわかりやすいネーミングが多いですね。
中には、「花粉」そのものズバリの文字商標の登録もあります。
個人的には、「必殺花粉仕事人」がお気に入りです(笑)。

 

それにしても、ここまでウイルスとか害虫などと同じような扱いをされていると、さすがに少し花粉が気の毒に思います。

 

・商標登録が拒絶された「花粉」の文字を含む商標

ところで、ご存知のように、商標登録が認められるためには、その商標が自他商品役務の識別標識として機能するものであることが必要です。識別力のない商標、すなわち、その商品やサービスの品質・特徴・内容などを普通に表すにすぎないものである場合、商標登録は認められません

 

「花粉」の文字を含む商標は、上掲の登録例のようにシンプルでわかりやすいものが多いことから、商標登録出願をしても、特許庁の審査で識別力が否定されるケースも少なくないと予想されます。

 

実際に過去の審査例を調べてみると、予想通り、かなりの数の商標が登録拒絶となっていました。一例としては、以下のような商標があります。

 

・「花粉快適」 第30類
・「花粉快調」 第30類
・「さよなら 杉花粉」 第29類、30類、31類、32類
・「杉花粉ドリンク」 第5類、32類
・「花粉退治」 第32類
・「花粉クリーン」 第32類
・「花粉カットジュース」 第32類
・「花粉プロテクトコート」 第25類
・「花粉」 第5類
・「花粉撃退」 第30類、32類
・「花粉バリアー」 第25類
・「花粉サプリ」 第29類、30類、32類
・「花粉とるとる」 第5類
・「花粉がつきにくいマスク」 第5類
・「花粉ダブルブロック」 第5類
・「花粉顔でブロック」 第1類、5類
・「花粉顔でガード」 第1類、5類
・「花粉症サプリ」 第5類
・「花粉レスキュー」 第3類、5類
・「花粉・PM2.5除去住宅」 第36類、37類

 

「さすがに、これはしょうがない」というものもあれば、上掲の登録例と比較して「なぜダメなのだろう?」と思うようなものもありますね。同じ商標でも、区分によって登録できたものとできなかったものもあるようです。

 

個人的には、「花粉 鼻でブロック」は登録になったのに、「花粉顔でブロック」は登録拒絶となっているのが興味深いですね。理由がよくわかりません。

 

なお、最近は少し傾向が変わってきたものの、10年前くらいから特許庁の審査における識別力の判断がだいぶ緩くなっていた気がするので、そのあたりの影響もあるかもしれません。昔、2000年代半ばくらいまでは、識別力の判断はかなり厳しかった印象があります。識別力がギリギリ、微妙と考えられそうな商標が登録されているのは、おそらく、この10年くらいの間に特に多いと思われます。

 

また、登録拒絶になった商標の中には、意見書の提出や、拒絶査定不服審判の請求をしていないものも少なくありません。これらの商標の中には、根気強く反論をしていれば登録が認められたものもあるであろうと思われます。

 

・「花粉」に関する商標の裁判例

なお、「花粉」に関する商標の裁判例として、「花粉のど飴事件」(東京地裁平成15年6月27日(平成14年(ワ)10522))があります。

 

かなり興味深い事件で、今読むと裁判所の判断に「えっ!?」と思われるかもしれません。よろしければ、ご参考にしてみてください。
ちなみに、今から20年以上前の事件なので、現在であれば結論が変わった可能性はあると思われます。

 

というわけで、今回は、「花粉」の文字を含む商標について、どれくらいの数が商標登録されているのか、そして、具体的にどのような商標があるのかを調べてみました。

 

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「商標登録とは〇〇〇である」という説明

そこそこ長い間、商標の仕事をしていて、よく不思議に思うことがあります。
それは、「商標登録とは〇〇〇である」という端的な説明が、世の中で意外とされていない点です。

 

もし、手元に商標に関する書籍があれば、ぜひ開いてみてください。
おそらく、どの本も「登録主義」とか「登録要件」に関してはズラズラと説明されていると思いますが、端的に「商標登録とは〇〇〇である」と書かれているものは、ほとんどないのではないかと思います

 

いずれも、「商標登録」という語が、当たり前のように使われているのではないでしょうか。特許庁のウェブサイトにあるコンテンツですら、そのように見受けられます。

 

一方、商標登録を初めて知った事業者の方々や、初めて商標登録を検討しようと思う事業者の方々などからすれば、まず、「商標登録とはなにか?」というところから入るはずです。そして、経営者は忙しいので、手っ取り早く知りたいというのが実情でしょう。

 

しかし、本を見ても、ネットで調べても、端的な「商標登録とは〇〇〇である」という説明がなかなか見当たらないので、「?」のままとなることが多いのではないかと、個人的には懸念しています。なんとなく、「商標登録」という文字のイメージで理解するしかないという感じなのではないでしょうか。

 

幸い、Googleで「商標登録とは」をキーワードとして検索してみると、特許事務所のウェブサイトなどで、これが端的に説明されているものが散見されます。ただ、それらを実際に見てみると、その内容は意外とまちまちで、「結局、どういうことよ!?」と混乱してしまう可能性も、否定できないように思います。

 

まぁ、そもそも「商標登録」の一般的にありふれた定義というものがないので、ある意味仕方がないのかもしれません。筆者もいろいろ探してみましたが、あの広辞苑にすら書かれていませんでした。

 

このような現状ですので、おそらく、『「商標登録」と「商標権」は、何が違うの?』などといった疑問を持っている事業者の方々は、意外と少なくないと思われます。そして、このあたりをよく理解しないまま、商標登録を済ませているという方々も、実際には多いのではないかと推測されます。

 

さて、上述のように一般的な定義がありませんので、あくまで筆者のオリジナルになりますが、端的にいえば、商標登録とは以下のように言えるのではないかと思います

 

商標登録
→ ある商標を、特許庁の登録原簿に登録する行政処分のこと。
  この設定登録によって、商標権という権利が発生する。

 

厳密に言えば不正確かもしれませんが、概ね理解はしやすいのではないでしょうか。

 

商標登録の目的とは、要は「商標権」という権利を取得するためだと言えます。
よって、言い方を変えると、商標登録とは、

 

商標権を取得するために、特許庁にする手続

 

と言うこともできるでしょう。

 

最終目的は、その商標に関する商標権の取得です。
「商標権」が欲しいから「商標登録」をする、というロジックです。
よって、我々弁理士などが「商標登録しておきませんか?」と提案するのは、「商標権を取得しておきませんか?」という意味と実質的にイコールです。

 

そして、大事なのは、商標登録の事実よりも、その商標権の内容です
商標登録自体ができても、たとえば指定商品や指定役務を間違えるなどして、取得した商標権が実際には使い物にならないということであれば、商標登録をした意味がありません

 

普段からある物事に関わっている人にとっては「当たり前」のことであっても、それがまったく初めての人にとってはわかりにくかったりするものです。今回取り上げた、「商標登録とは〇〇〇である」という点についても、同様ではないかと思います。こういった点につき、世の中に対して、もう少し端的かつ丁寧に説明する機会を増やすべきではないかと、いち弁理士として感じた次第です。

 

というわけで、今回はいつもと少し趣向が異なりましたが、「商標登録とは〇〇〇である」という端的な説明が意外とされていないという点について、お話いたしました。

 

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「商標登録後に、区分や指定商品・指定役務の追加はできますか?」という質問

商標登録後に、区分や指定商品・指定役務の追加はできますか?

 

このような質問を受けることが、意外とよくあります。
すでにした商標登録の内容に、後から区分や指定商品・指定役務を追加できるか?
というのが質問の趣旨です。

 

多くは商標登録の経験がない事業者の方々からですが、すでに商標登録をしている事業者の方々から聞かれることもあります。

 

これだけよく聞かれるので、疑問に思っている方も少なくないと思われます。
そこで、今回の記事では、この点について少しお話してみたいと思います。

 

・すでにした商標登録の内容に、後から区分や指定商品・指定役務の追加はできない

結論から言うと、「できません」ということになります

 

商標登録後は、願書に記載していた区分や指定商品・指定役務について手を加えることは認められません。

 

なお、商標登録後に、一部の区分や指定商品・指定役務について、商標権を放棄したり、分割したりすることは可能ですが、まったく新しいものを追加することはいずれにしてもできません

 

一度確定した商標権の範囲が後から簡単に拡張すると、他者への影響が大きく混乱が生じてしまいますので、よくよく考えてみれば当然のことだと言えるでしょう。

 

・では、追加で商標登録したい区分や指定商品・指定役務がある場合はどうする?

とはいえ、ある商標の商標登録をした後で、他の区分や指定商品・指定役務についても商標登録しておきたいと考えることも少なくないでしょう。

 

たとえば、その商標を使った事業が順調で、新たな商品・サービス展開をするような場合は、それらについても商標登録したいと考えるのが自然ですし、必要なことです。

 

それでは、このような場合はどうすればよいのでしょうか?

 

このような場合は、同じ商標について、もう1つ商標登録を取得します。
すなわち、新たに必要となった区分や指定商品・指定役務を記載した願書を作成して、もう一度、特許庁に新しい出願をします

 

出願のやり直しというイメージではなく、追加分を新たに出願するイメージです。
たとえば、すでに第3類について商標「紫苑」を商標登録済で、後から第5類も商標登録したくなった場合、この第5類を対象とする願書を作成して、新たに特許庁に出願します

 

なお、商標がまったく同じでも、すでにしている商標登録との紐づけはされません。
すでにした商標登録とは、別個の取扱いとなります。
よって、通常の出願と同様に、新たな出願についても審査がありますし、審査結果が出るまでの時間が短縮されるわけでもありません。もちろん、登録査定が出たら、商標登録料を納付することが必要です。

 

上述の例の場合、無事に商標登録が認められると、以下の2件の登録商標保有するという状態になります。

 

・商標「紫苑」 第3類 (登録第6〇〇〇〇〇〇号)
・商標「紫苑」 第5類 (登録第6△△△△△△号)

 

登録日が異なりますから、存続期間の満了日も別々です。
それぞれの更新時期を間違えないように注意する必要があります。

 

・同じ区分の場合でも、新しい出願が必要?

すでに商標登録をしている区分と同じ区分の場合であっても、取扱いは変わりません。

 

たとえば、第3類「化粧品」について商標「紫苑」を商標登録済で、後から同じ第3類の「せっけん類」についても商標登録をしたくなった場合、たとえ区分が同じであっても、もう一度第3類を対象とする願書を作成して、新たに特許庁に出願します

 

この場合、無事に商標登録が認められると、以下の2件の登録商標保有するという状態になります。

 

・商標「紫苑」 第3類「化粧品」    (登録第6〇〇〇〇〇〇号)
・商標「紫苑」 第3類「せっけん類」(登録第6◎◎◎◎◎◎号)

 

指定商品や指定役務の内容が異なれば、同じ区分について、まったく同じ商標の商標登録が複数併存することもあり得るということです。
なお、この場合も存続期間の満了日は別々となりますので、誤解しないでください。

 

ちなみに、この例の場合、先の出願の時点で「せっけん類」を指定商品に含めておけば、そもそも追加で新しい商標登録をする必要はありませんでした。結果として、「モレ」が生じていたことになります。この場合、無事に登録ができたとしても、1件分の商標登録費用を無駄に負担したことになります。このようなことがないように、願書に含める指定商品・指定役務については、当初よりしっかりと検討することが大切です。

 

余談ですが、この例の場合、新たにする出願の指定商品に「化粧品」も一緒に含めることが可能です。これを含めて商標登録をしておけば、先にした商標登録は実質的に不要とも言えますので、後々「更新をしない」という選択肢が生まれます。

 

・出願後~商標登録前の場合は?

商標登録後、その登録内容に区分や指定商品・指定役務の追加はできないことがわかった。
では、出願してから商標登録がされる前ならどうなの?
このような疑問を持った方もおられるかもしれません。

 

この場合、基本的に登録査定が出る前の段階であれば、願書に記載した内容についての「補正」が可能です。ただし、「要旨変更」となる補正は認められません

 

では、「要旨変更」とは何ぞやという話ですが、ざっくりと言えば、記載していた内容の範囲を超える変更を加えてはダメよということです。

 

ですので、区分や指定商品・指定役務についても、願書に記載していた内容の範囲を超える追加はできないということになります。たとえば、第3類「化粧品」を指定商品として願書に記載していた場合に、「せっけん類」を追加する補正は認められません。

 

結局のところ、出願してから商標登録がされる前であっても、区分や指定商品・指定役務の追加が認められるのは、きわめて限定的となります。区分については、誤記の訂正に当たるような場合でなければ追加は認められませんし、願書に記載していた内容の範囲外の指定商品・指定役務を追加することは一切認められません。

 

このように、一度出願をすると、区分や指定商品・指定役務を追加することは実質的に不可能となりますので、出願前にはじっくり慎重に出願内容を検討することが大切となります。

 

以上、今回は「商標登録後に、区分や指定商品・指定役務の追加ができるか?」、すなわち、「すでにした商標登録の内容に、後から区分や指定商品・指定役務を追加できるか?」という点についてお話しました。

 

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【商標登録】「雪」に関する商品・サービスと分類

昨日(2024年2月5日)は、関東地方で大雪となりました。
私のいる横浜市でも、かなりの雪が積もりました。
2年前くらいにも雪が降った記憶がありますが、ここまではなかった気がします。

 

さて、昨日、そんな「雪」を眺めながら帰路につく途中で、ふと思いました。
「雪」に関する商品・サービスの分類って、どうなってるのだろう?』と(笑)。

 

私は15年以上、商標弁理士をやっていますが、考えてみれば商標調査や商標登録などの場面で、今までこれらに一度もかかわったことがない気がします。というか、かかわったことのある弁理士の方が断然少ないのではないでしょうか。

 

というわけで、今回の記事では、J-PlatPatの「商品・役務名検索」を利用して、「雪」に関する商品・サービスや、それらの分類について見てみましょう

 

・「商品・役務名検索」を使って検索

さて、本ブログの記事では「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」の「商標検索」がよく登場しますが、実務上よく使うデータベースとして、他に「商品・役務名検索」というものもあります。

 

この「商品・役務名検索」では、たとえば「検索キーワード」に具体的な商品・サービスを入力して検索することで、その語を含む指定商品・指定役務の表記や、それらの区分類似群コード等を調べることができます。

 

今回は、「検索キーワード」に「雪」と入力して、検索してみましょう。

 

・「雪」に関する商品・サービスと分類あれこれ

「検索」ボタンをクリックすると、87件がヒットしました。
(※2024年2月6日現在)

 

数が若干多いので、今回はそれらの商品・サービスの一部を以下にご紹介します。

 

・第1類「融雪剤」(01A01)
・第1類「人工雪製造用化学剤」(01A01)
・第6類「金属製防雪柵」(07A01)
・第7類「除雪機」(09A03 09G99)
・第7類「除雪機用ゴムクローラ」(09A03 09G99)
・第8類「雪かき」(13B01)
・第8類「雪かき用具」(13B01)
・第11類「道融雪装置」(09E11 09G99)
・第11類「道路融雪装置」(09E11 09G99)
・第11類「人工造雪装置」(09G99)
・第12類「雪上車」(12A05)
・第12類「除雪自動車」(12A05)
・第12類「鉄道用除雪車」(12A04)
・第19類「プラスチック製防雪柵」(07A03)
・第28類「円盤型雪そり」(24C01)
・第28類「クリスマスツリー用人工雪」(24A01)
・第37類「除雪機の修理又は保守」(37D99)
・第37類「除雪」(37Z99)
・第37類「人工雪の降雪」(37Z99)
・第39類「除雪車の貸与」(39L02)

 

ざっくりと、このような感じでしょうか。
いずれも、見事に馴染みがありません(笑)。

 

第37類の「除雪」や「人工雪の降雪」に付いている「37Z99」という類似群コードなんて、もしかすると初めて見たかもしれません…。ちなみに、他には第37類「タイヤの再生」に、類似群コード「37Z99」が付いているようです。

 

・ふと感じた疑問

ところで、ふと思ったのですが、上記の一覧には「雪」そのものがありません。

 

「水」や「氷」も商品になるのですから、雪だって商品になり得るのではないでしょうか。
冷凍保存パックなどに詰めて、商品として販売することは可能だと思います。
実際、インターネットで検索してみると、本物の雪の通販などが行われているように見受けられます。

 

そこで疑問に感じたのが、「雪」が商品となった場合の分類です。
いったいどの区分に分類されて、どのような類似群となるのでしょうか。

 

近い商品としては、第30類の「氷」(29D01)が考えられそうですが、第30類は基本的に「食用」の商品が分類されるはずです。特許庁の「商品及び役務の区分解説〔国際分類第11-2022版対応〕」にも、以下のような記載があります。

 

「氷」(29D01)
 この商品は、食用の「氷」が該当します
 なお、「ドライアイス」や「氷菓」「かき氷」は、この商品には含まれず、前者は第1類「化学品」に属し、後者は本類「菓子」に属します。

※傍線は筆者による。
※「商品及び役務の区分解説〔国際分類第11-2022版対応〕」(P145)

 

これによれば「この商品は、食用の「氷」が該当します。」とあるところ、「雪」は食用ではないのが普通な気がします(食べる人もいるのかもしれませんが…)。
ただ、「天然又は人工の氷」や「飲食物冷却用氷」もここに分類されているので、必ずしもそれ自体が食用でなくてもOKなのかなという気がしなくもありません。う~ん、でもちょっと違う気もします。

 

諸外国の取扱いはどうなっているのだろうかと、他国の「商品・役務名検索」と同様のデータベースをいくつか調べてみましたが、「snow」のみの商品のヒットはありませんでした。

 

う~ん、結局よくわかりませんね。気になります。
特許庁の分類室に興味本位で聞いたら、さすがに怒られますかね?(笑)。

 

というわけで、最後は少しモヤモヤとしましたが、今回は「商品・役務名検索」を利用して、「雪」に関する商品・サービスや、それらの分類について見てみました。

 

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「節分」を含む商標の商標登録の数はどれくらい?

早いもので、1月が終わり2月になりました。
そして明日は、2月3日。「節分」です。

 

節分といえば、「豆まき」と「恵方巻」のイメージがある方が多いのではないでしょうか。私が小さい頃は、毎年「豆まき」が楽しみでしたが、最近の子供たちはあまりやらないそうですね。また、「恵方巻」も、店舗での大量の売れ残りや廃棄による食品ロスが問題になっているとか・・・。

 

何というか、寂しいかぎりです。

 

今回の記事では、この「節分」に関する商標登録について、取り上げてみたいと思います。

 

・「節分」の文字を含む商標登録はどれくらいある?

さて、「節分」に関連した商品やサービスについて、商標が使われることもあるでしょう。それらの商標の中には、「節分」の文字を含むものも、きっとあるはずです。

 

では、「節分」の文字を含む商標の商標登録はどれくらいあるのでしょうか?
正直、まったく予想がつきませんね(笑)。

 

ちなみに、以前の記事で、「クリスマス」という読み方が含まれている登録商標の数を検索したことがありましたが、この時は209件がヒットしました。

astermarks.hatenablog.com

 

さすがに、「クリスマス」の方がメジャーなイベントな気がしますし、実質2日間あることを踏まえると、これよりは「節分」の方が少なそうな気がします

 

・J-PlatPatを利用して、実際の商標登録を調べてみましょう

気になることは、さっさと調べてしまうのがスッキリします(笑)。
というわけで、例によって、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使って、「節分」の文字を含む商標の商標登録がどれくらいあるのか、調べてみましょう。皆様もぜひ一緒に検索してみてください。

 

まずは、「J-PlatPat」の「商標検索」にアクセスします。

 

今回は、「節分」の文字を含む商標を調べるだけなので、検索方法はシンプルです。
一番上の検索項目「商標(検索用)」の「キーワード」の入力フォームに、「?節分?」と入力すればOKです。

 

この条件で検索すれば、「節分」だけでなく、「〇〇〇節分」、「節分〇〇〇」、「△△△節分〇〇〇」といった構成の商標を検索することができます。

 

入力ができたら、画面一番下の「検索」ボタンをクリックしましょう。

 

・驚き!?の「節分」商標の検索結果

さて、その検索結果は・・・

 

8件がヒット!
(※2024年2月2日現在)

 

たったの8件!?
少なっ!!!

 

思っていたよりもずっと少ないと感じたのは、私だけではないでしょう。
結果一覧で、すべての商標を確認するのも、一瞬で終わりますね。

 

ちなみに、私が特に「節分」に関する商標っぽいと思ったのは、以下の4つです。

 

・「節分まき」(登録5330616号) 第30類
・「ヤマザキ∞節分ロール」(登録5972675号) 第30類
・「§節分あ~ん巻き」(登録6165905号) 第30類
・「節分ふくさ恵方まき」(登録6711997号) 第30類

 

面白いのが、第30類を指定しているので、一見すると恵方巻の商品に関連した「巻き寿司」の商標なのかと思いきや、いずれも「菓子」の商標であると見受けられる点です。

 

なるほど、節分で食べる「巻き」は、巻き寿司じゃなくて巻き菓子でもいいじゃない!という発想でしょうか。とても斬新ですね。

 

個人的には、和菓子の「ふくさ」が好きなので、「節分ふくさ恵方まき」が気になります。ネットで検索してみたところ、黒胡麻風味の生地でカラフルな餡を巻いた、巻き寿司の形を模した和菓子のようです。これは、ナイスアイデアな商品ですね!

 

ちなみに、恵方巻といえば、商標業界では有名な裁判例として「招福巻事件」(大阪高裁平成22年1月22日(平成20(ネ)2836))があります。

 

十二単招福巻」の使用行為が、「招福巻」の商標権を侵害するかが争われた事件です。商標の類似性だけでなく、商標の普通名称化が論点となった興味深い事件ですので、ぜひチェックしてみてください。

 

というわけで、今回は「節分」の文字を含む商標の商標登録がどれくらいあるのかを調べてみました。

 

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意外!? 商標法に「商品」と「サービス」の定義はない!

商標とは、「商品やサービスの識別標識」のことです。
商品やサービスがあってこその商標、ということになります。

 

商標実務では、その商標を、どのような商品・サービスについて使うのかという点が常に基本になると言っても、過言ではないでしょう。また、商標を使う対象が、そもそも商品やサービスと言えるのかどうかという点が、しばしば問題になることもあります。

 

このように、商標実務においては、商品やサービスという概念が非常に重要となります

 

しかし、意外に思われるかもしれませんが、実は、商標登録などの商標制度に関するルールを定めている「商標法」という法律には、「商品」や「サービス」の定義がありません。(※ちなみに、法律上、サービスのことを「役務」と言います。以下、「役務」と記します。)

 

そのため、時には困ったことになりそうな場合もあります(苦笑)。
今回は、この「商品」や「役務」とは何ぞや?という点について、少しお話してみたいと思います。

 

・「商品」の一般的な解釈

上述のように、商標法には、「商品」の定義がありません
そのため、「商品とは何ぞや?」という点については、これまでに学説や裁判例などで様々な解釈が出されてきました。

 

現在では、特許庁の「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」で解説されている、以下の解釈で理解している人がほとんどだと思います。

 

<商品>
 商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう。

 

特許庁「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕」(P1531)

 

独立して商取引の目的になること、そして、流通性があることが、「商品」であるための条件というのが、一般的な考え方であると言えるでしょう。

 

なお、従来より「有体物であること」も「商品」であるための一条件と考えられてきました。ただ、平成14年に、無体物である「電子計算機用プログラム」等が「商品」に含まれることが明確化されたため、現在では、必ずしも絶対条件であるとは言えなくなりました。もっとも、「流通性があること」が条件となっている以上、基本的には「有体物であること」も一条件であると言えます。

 

また、以前は、「有償性」も「商品」であるための一条件と考えられることがありましたが、現在では、必ずしも有償か無償かには左右されないというのが、一般的な考え方になっています。

 

・「役務」の一般的な解釈

「商品」と同様に、商標法には、「役務(サービス)」の定義もありません
ただ、商品のように解釈には諸説あるというわけではなく、概ね、「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」でも解説されている、以下の解釈で一般的に理解されています。

 

<役務>
 他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たり得るべきものをいう。

 

特許庁「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕」(P1531)

 

商品の解釈よりも、多少わかりやすいのではないかと思います。
他人のために行うこと、そして、独立して商取引の目的になり得ることが、「役務」となるためのポイントと言えるでしょう。

 

たとえば、第35類の区分に含まれる役務に、「広告業」がありますが、これはそれこそ「他人のために行う」広告が該当するのであって、自分のための広告を意味しているわけではありません特許庁の「商品及び役務の区分解説」にも、以下のように説明がされています。

 

【解説】
「広告業」(35A01)
 このサービスは、広告代理店等、主として依頼人のために広告を行うものが該当します。
 なお、自社の商品又はサービスの広告を自ら行うものは、このサービスに該当しないと考えられます。

 

※傍線は筆者による

特許庁「商品及び役務の区分解説〔国際分類第11-2022版対応〕」(P162)

 

よく誤解される点なので、商標登録を検討する際には注意が必要です。

 

・「小売等役務」について

ところで、平成18年からは、「役務」には「小売等役務」が含まれることが、商標法でも明確化されています。

 

小売等役務とは、いわゆる第35類の区分に含まれる「〇〇〇の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と表記される役務のことです。(「〇〇〇」には、たとえば「薬剤」などの具体的な商品が該当します。)

 

商標法における小売等役務とは、商品の販売行為自体をサービスとして取り扱うわけではなく、具体的には、「商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった、最終的に商品の販売により収益をあげる小売業者等の提供する総合的なサービス活動全体」のことを意味します。

 

そういった意味では、小売等役務とは、あくまで商品の販売に付随したサービスと言えますので、上述の役務の条件となる「独立して商取引の目的になること」を満たしているとは言えないかもしれません。

 

このあたりの点は若干モヤモヤしますが、小売等役務については「そういうもの」だと例外的に考えるしかないという印象です。すでに法改正から15年以上が経っているものの、小売等役務については、実務上もイマイチはっきりしていない点が少なくないというのが実際のところです。

 

以上、今回は、商標法には「商品」や「サービス」の定義がないこと、そして、それでは「商品」や「役務」とは何ぞや?という点について、お話いたしました。皆様のご理解が深まれば幸いです。

 

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【商標登録】登録査定が出た後で、区分を減らして商標登録料を納付できる?

商標登録をしようと考えた当初には、その商標を使用する商品・サービスの構想がたくさんある場合も、少なくないと思います。そのため、願書には複数の区分を含めて、出願手続をすることもよくあることです。

 

一方で、特許庁の審査結果が出る頃(約半年後)には、その状況が変わっていることもあるでしょう。

 

無事に審査をパスして「登録査定」が出た段階で、「やっぱり、この区分はいらないかも・・・。」と思うこともあるのではないでしょうか。また、出願料(※3,400円+(区分数×8,600円))に比べると、商標登録料(※区分数×32,900円)は高額になるため、「正直、区分数が多いと登録料の支払いが苦しい・・・。」という状況になることも予想されます。

 

それでは、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することはできるのでしょうか。今回は、この点について少しお話したいと思います。

 

・「登録査定」が出た後でも、例外的に区分を減らす補正は可能

結論から言うと、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することは可能です。

 

この点、実は商標法や商標制度に詳しい人の方が、勘違いをしやすいかもしれません。
というのも、商標法では、手続の補正ができるのは、「事件が審査等に係属している場合に限られる」というのが、原則とされているからです。

 

(手続の補正)
第六十八条の四十 商標登録出願、防護標章登録出願、請求その他商標登録又は防護標章登録に関する手続をした者は、事件が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属している場合に限り、その補正をすることができる

※傍線は筆者による。

 

これによれば、「登録査定」が出た後は、すでに「審査に係属している場合」ではなくなっているため、原則的な考え方では、もはや区分を減らす補正手続はできないということになりそうです。

 

一方で、この条文の続く第2項では、以下のように規定がされています。

 

 商標登録出願をした者は、前項の規定にかかわらず、第四十条第一項又は第四十一条の二第一項の規定による登録料の納付と同時に、商標登録出願に係る区分の数を減ずる補正をすることができる。

 

これによれば、例外的に、商標登録料の納付と同時であれば、「区分の数を減らす補正」をすることができるとされているのです。

 

この規定のおかげで、「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することが可能ということになります。

 

ちなみに、あくまで可能なのは「区分の数を減らす補正」であり、指定商品・指定役務に関する補正は認められませんので、誤解しないようにしてください。

 

・区分を減らして商標登録料を納付する際の注意点

ただし、区分の数を減らす補正は、「商標登録料の納付と同時に」しなければならない点には注意が必要です

 

慣れない方にとっては、「同時に」のニュアンスがわかりにくいかもしれませんが、要はこれらの手続を一緒にせよということです。具体的にざっくり言えば、「商標登録納付書」と「手続補正書」の手続書類を一緒に提出せよという話となります。

 

「商標登録納付書」には、区分を減らした後に残った区分の数を記載した上で、それに応じた商標登録料を納付します。たとえば、元々は3区分あったのを、2区分減らして1区分にした場合は、1区分の商標登録料を納付すればOKです。

 

なお、この際、商標登録料納付書には、【その他】欄を設けて、「商標法第68条の40第2項の規定による手続補正書を同時に提出」のように記載せよとされています特許庁の事務処理に混乱を生じさせないためにも、記載を忘れないように注意しましょう。

 

・予算が苦しい時こそ有効利用を!

「登録査定」が出た後に、区分を減らして商標登録料を納付することが可能であることを知らない場合、「(すべての区分の)商標登録料の支払いが苦しいので、納付手続はせずに登録自体を諦める」という、非常にもったいないことをしてしまう可能性があります。

 

こういった場合でも、眼目の商品・サービスが含まれる区分だけは、少なくとも商標登録を進めるべきでしょう。このような時こそ、区分を減らしての商標登録料納付が役立ちます。なお、区分を減らした場合でも「分割納付」が認められますので、これを併用することで、この時点での出費をさらに抑えることが可能です。

 

特許事務所や弁理士に商標登録を依頼している場合でも、登録査定が出ると、「このまま商標登録料を納付しますか、納付しませんか?」とか、「(納付する場合)分割納付を希望しますか、しませんか?」といったことは聞かれるかもしれませんが、登録する区分を減らすことについて聞かれることはあまりないのではないかと思います。必ずしもオールオアナッシングではなく、このような登録料納付の選択肢があることも、ぜひ覚えておいていただければと思います

 

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