商品やサービスのネーミングを考えるのは、楽しいものです。
考案したネーミングについて商標調査を行ない、問題がなさそうであれば商標として正式採用するというのが、一般的な流れになるでしょう。そして、それをしっかりと保護するためには、商標登録をすることが重要です。
ところで、一度にたくさんのネーミングの採用検討が必要なケースがあります。
たとえば、シリーズものの商品を展開する場合などが考えられるでしょう。
ここでは架空の事例として、あるお菓子メーカーが、「サムライシリーズ」の新商品の開発・製造販売を考えたとしましょう。この「サムライシリーズ」のお菓子は、様々なフルーツの味が楽しめるもので、商品名として、それぞれ以下のネーミングを考えているとします。
・ミカンサムライ
・リンゴサムライ
・グレープサムライ
・メロンサムライ
・ピーチサムライ
まずは5種類の味から販売を開始し、売れ行きが良ければ、他のフルーツの味の商品も、同様のネーミングを付けて追加で展開してきたいと考えています。
さて、これらの商品名のネーミングは、商標になります。
よって、上述のように、これらを正式採用するためには、事前の商標調査は必須と言えますし、いざ採用するとなれば商標登録をしておくべきです。
一方で、商標の数が多いということは、その分、それらの商標調査や商標登録に、費用や労力がかかることになります。資金が豊富な大企業であればあまり問題はないかもしれませんが、余裕のない中小企業であれば、その影響は決して小さくはないでしょう。
上記の架空の事例の場合も、少なくとも5件の商標の商標調査、商標登録が必要となるわけです。しかも、今後、新商品を追加していくたびに、それらが新たに必要となります。
しかし、だからといって、商標調査も商標登録もしないということになれば、リスクが大きいと言わざるを得ません。なんとか、良い方法はないものでしょうか。
そこで一つの解決手段として考えられるのが、メインとなる商標のネーミングは1つとした上で、味の種類については識別力のない表示とすることです。
たとえば、商標は「フルーツサムライ」として、以下のような商品名で展開するというのはどうでしょうか。
・フルーツサムライ ミカン味
・フルーツサムライ リンゴ味
・フルーツサムライ グレープ味
・フルーツサムライ メロン味
・フルーツサムライ ピーチ味
私も大好きなお菓子、「う〇い棒」もこのようなタイプの表示だったかと思います(笑)。
このようにすれば、味の種類の表記については基本的には識別力がなく、商標的な問題にはまずなりませんから、主に「フルーツサムライ」についてのみ、商標調査や商標登録を考えれば良いことになります。追加で他のフルーツの味の商品を展開しても、メインとなる商標は変わりませんので、新たにがっつりと商標調査などをする必要も、基本的にはないはずです。
結果的に、「ミカンサムライ」や「リンゴサムライ」のように、個別の商品名のネーミングを商標として採用する場合よりも、費用や労力をかなり節約できると思いますが、いかがでしょうか。
もちろん、これはあくまで「商標調査や商標登録にあまりお金をかけたくない」場合のネーミングの工夫のようなもので、こうすることがネーミング的にも理想的とは限りません。この点は、注意をする必要があります。「ミカンサムライ」や「リンゴサムライ」のようにした方が、消費者からは好評で売上げも良いという可能性も十分考えられます。
また、当初から採用を検討しているネーミングが、「ミカン〇〇〇」、「リンゴ△△△」、「グレープ□□□」などの構成で、どの部分も統一されていなければ、そもそもこのような手段はとれません。
とはいえ、商標登録を意識したネーミングの工夫としては、覚えておいても損はないと思います。今回は、架空の事例として商品がお菓子の場合を挙げましたが、他の商品・サービスの分野におけるネーミングにおいても、十分に応用が可能でしょう。
ご参考になれば幸いです。
なお、当事務所ではネーミングの絞り込みに役立つ「ライト商標調査」のサービスを弁理士がご提供しております。簡易調査の位置付けですが、通常の商標調査よりも低価格で手軽に調査結果を知ることができます。もしよろしければ、ご参照ください。
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