「商標登録」に初めて関心をもって、インターネットなどでいろいろと調べたりする人も少なくないと思います。
しかし、商標登録について調べていると、ところどころで「商標権」という言葉を見かけるということはないでしょうか?
しかも、「商標登録をすると、~ができる」と説明されたものもあれば、「商標権によって、~ができる」と説明されたものもある。そして、それらをよく読むと、内容は同じことを言っているように感じる。
え!? これって何なの?
「商標登録」と「商標権」って、何が違うの???
こんなふうにモヤモヤした経験がある商標初心者の方は、意外と少なくないのではないかと思います。
この点、我々弁理士のようなガチの実務家にとっては「当たり前すぎる」前提知識となるためか、ネット上などでは、商標登録と商標権の違いが書かれていないことも意外と多いように感じます。
さて、商標法第18条第1項では、以下のように規定されています。
(商標権の設定の登録)
第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。
これはどういうことか、ちょっと見てみましょう。
まず、「商標登録」をするためには、特許庁に商標登録出願をします。
審査に無事パスすると、「登録査定(商標登録をすべき旨の査定)」が出されます。
それから30日以内に商標登録料を納付すると、この「設定の登録」がされます。
そしてその結果、「商標権」が発生する、という流れになります。
要するに、「商標登録」をすることによって、「商標権」という権利が発生するわけです。
そして、この商標権があることによって、自分だけが独占的に商標を使用できたり、他人の使用を排除できたりすることになります。登録があるからではなくて、権利があることがそれらの根拠となるわけですね。
逆の見方をすれば、商標権を取得するために、商標登録をするわけです。
どちらの方がより重要なワードかといえば、むしろ「商標権」の方だと思います。
ただ、ネット上では、「商標権」の語よりも「商標登録」の語の方が断然多く使われているように思います。実際に、Googleで完全一致検索をしてみると、「商標権」は約660万件がヒットするのに対して、「商標登録」は約2,440万件がヒットします。
おそらく、この理由としては、「商標登録」の方が世間一般的に知られた語であるからなのでしょう。たしかに、商標の制度などについて知りたい場合に、「商標登録」で検索する人はいても、いきなり「商標権」で検索する人はまずいないように思います。
特許事務所などのホームページや弁理士が書く記事などでも、やはり少しでも多くの人に検索で見付けてもらいたいという思惑(?)がありますから、自然と「商標登録」の方が多く使われる傾向になるのでしょう。
そういえば、私自身も、クライアントに「商標登録をしておくことをお勧めします」とは言っても、「商標権を取得しておくことをお勧めします」とはまったく言いませんね(笑)。
一方で、面白いのは商標に関する「侵害」の話になった場合です。
侵害の話になると、「商標権の侵害」と言うことがほぼ100%で、「商標登録の侵害」という言い方はまず聞きません。なぜ、「商標登録の侵害」とは言わないのだろうかという疑問を持った方も、おそらく中にはいらっしゃるかと思いますが、その理由は、上述の「商標登録」と「商標権」の違いがわかれば「なるほど!」と納得されるのではないかと思います。「商標登録の侵害」というのは誤った使い方となります。
以上の次第ですが、本記事で、「商標登録」と「商標権」の違いについてのモヤモヤが解消された方がいらっしゃれば幸いです。
本ブログでは、こういった商標初心者の方々のモヤモヤを解消できるような記事も、たまに書いていきたいと考えております。
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