商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

商標登録、審査で出願人の職業がチェックされる場合がある?

自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については・・・、商標登録を受けることができる。

 

商標法第3条1項柱書では、このように規定されています。

 

なお、ここで言う「使用をする」というのは、必ずしも現在において実際に使用をしていることが必要というわけではなく、将来的に使用する意思がある場合も含まれます

 

よって、まだ実際には使っていない商標を特許庁に出願した場合であっても、登録の条件を満たすかぎり、商標登録は認められることになります。たとえば、これから起業を考えている人が、今後の事業で使うための商標を起業前に出願した場合であっても、商標登録はちゃんと認められます。

 

というわけで、商標登録の出願をした場合に、「自己の業務」についてはともかく、出願人が「現在、どんな身分か」とか「経営者なのか、サラリーマンなのか、無職なのか」などといった情報までは、特許庁が要求する必要はないはずです。

 

しかし一方で、願書に記載された指定商品や指定役務(※商標の保護を求める商品やサービスのこと)の内容によっては、特許庁としても、「本当に、それらについて商標を使うつもりなの?」と疑わざるを得ないケースもあるでしょう。

 

たとえば、それらの商品・サービスに関する業務を行うためには、法令に定める国家資格等を有することが義務づけられているような場合です。

 

この点、特許庁の「商標審査便覧」の「41.100.04」では、このような疑義がある出願が個人によりなされた場合には、審査において、その出願人が該当する国家資格等を有しているかをチェックすることが定められています。そして、その確認が最後までできなかった場合、商標登録は拒絶されるとされています。

 

ですので、このようなケースでは、実質的に出願人の職業がチェックされるに等しいとも言えるでしょう。

 

そして、実際に主なチェックの対象となるのは、
(1)医師、(2)歯科医師、(3)士業となります。
※注:あくまで対象の一部の紹介であり、これらだけではありません。

 

(1)医師
個人が、役務「医業」を指定して出願した場合、その出願人が「医師であること」がチェックされます。

 

具体的には、「厚生労働省HP:医師等資格確認検索」によりチェックされます。

なお、この検索サイトには、「2年に1度実施される医師届出、歯科医師届出において届出票の提出があった者が検索対象です。医師、歯科医師の名簿に登録されていても提出していない者は表示されません。」との注意書きがあります。

 

よって、実際にはお医者さんとしてバリバリ活躍していても、検索で出てこないケースもあり得ます。その場合は、一度「拒絶理由通知」が来た時点で、間違いなく医師の資格を持っていることが審査官にわかるような証拠を提出する必要があります。

 

(2)歯科医師
個人が、役務「歯科医業」を指定して出願した場合、その出願人が「歯科医師であること」がチェックされます。

 

チェックの方法は、医師の場合と同じく、「厚生労働省HP:医師等資格確認検索」により確認されます。

 

(3)士業
個人が、役務「訴訟事件その他の法律事務」を指定して出願した場合、その出願人が「弁護士等であること」がチェックされます。

 

個人が、役務「登記又は供託に関する手続の代理」を指定して出願した場合は、その出願人が「司法書士等であること」がチェックされます。

 

また、個人が、役務「工業所有権に関する手続の代理」を指定して出願した場合は、その出願人が「弁理士等であること」がチェックされます。

 

その他、公認会計士や税理士であることがチェックされる場合もあります。

 

チェックの方法は、その士業の所属する「〇〇会」(たとえば、日本弁理士会)のウェブサイトで利用できる会員検索ページ(たとえば、弁理士ナビ)などにより確認されます。

 

なお、これらの検索ページでは、実際に士業として登録をしている人しか検索はできない仕様になっていると思われます。「資格は有しているけど、現在は登録していない」といった場合には検索結果には出てこず、特許庁では事実確認ができないと考えられますので、この場合は、一度「拒絶理由通知」が来た時点で、間違いなく各士業の資格を持っていることが審査官にわかるような証拠を提出する、という流れとなるでしょう。

 

商標法や商標審査基準には書かれていませんが、(マイナーな?)「商標審査便覧」には、今回ご紹介した運用上のルールがあります。(1)医師、(2)歯科医師、(3)士業の方が、個人名義で商標登録をしようとする場合には、特にご注意ください

 

やはり、自分で出願はせずに、弁理士(特許事務所)に依頼されるのが確実でしょう。

弁理士等に依頼した場合でも、上述の資格チェックはされます。

 

当事務所のコンテンツにも、「お医者さんのための商標登録」、「歯医者さんのための商標登録」、「士業の先生のための商標登録」といったページがございますので、よろしければぜひご参照ください。

 

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