商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「商標の略称」は商標登録をするべきか?

商品やサービスに使われる「商標」は、長年にわたって使われたり、需要者に人気になったりして、略称で呼ばれるようになることがあります。

 

たとえば、「スタバ」(スターバックス コーヒー)」、「ドラクエ」(ドラゴンクエスト)、「ユニバ」(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)、「ドンキ」(ドン・キホーテ)など、例を挙げればキリがありません。

 

略称が使われるケースとしては、「事業者が自ら積極的に使う場合」と「需要者や顧客が使うことで広まっていく場合」が考えられますが、このような「商標の略称」についても、商標登録をしておくべきでしょうか

 

今回は、この「商標の略称」の商標登録について、少しお話してみたいと思います。

 

・事業者が自ら積極的に使う場合

事業者が自ら「商標の略称」を積極的に使う場合、それは一般的な商標と変わるところはないでしょう。よって、商標登録は積極的にしておくべきだと考えます。

 

世の中で、それがメチャクチャ有名な略称となっているような場合は、商標登録をしていなくても、「不正競争防止法」によって他者による使用を排除できる余地はありますが、やはり商標登録によって生じる商標権の方が、使い勝手は良いであろうと思います。

 

なお、自身の商標を軽率に略称にして使うと、他人の商標登録(商標権)との関係で問題になる可能性も考えられますので、注意が必要です略称の使用開始前には、必ず商標調査を行ない、その使用が他者の商標権を侵害することがないという点を、しっかり確認しておくべきでしょう。

 

予算が厳しい、使用頻度を考慮すると優先順位が低いといった理由で、商標登録を見送る場合も同様です。諸々の理由で、やむを得ず商標登録ができない場合であっても、「その略称の使用が、他者の商標権を侵害することがないか」という点は、使用開始前に必ず商標調査を行なって、確認しておく必要があります。

 

ちなみに、商標だけでなく、一般的な商品やサービスの名称を省略して使うような場合も、商標調査はしておいた方が良いかもしれません。その略称が、普通に使われているとはいえない造語的な語になる場合、他者によって商標登録がされている可能性も否定できないからです。

 

たとえば、「グラコロ」はマクドナルドの登録商標(登録6089157号)ですので、自身が「グラタンコロッケバーガー」とか「グラタンコロッケパン」を製造・販売する場合に、うっかり省略して「グラコロ」を商標的に使わないように注意しなければなりません。

 

・需要者や顧客が使うことで広まっていく場合

「商標の略称」が、需要者や顧客に使われることによって広まっていくというのは、それが支持されている証左であり、事業者からすれば大変有難いことでしょう。

 

ただ、商標登録をするかどうかという点では、悩ましいところかもしれません
商標登録は、「自己の業務に使用する商標」を対象とするところ、このような略称は、自身が使っているわけではないからです。

 

とはいえ、その略称が第三者に勝手に使われて、需要者や顧客に混乱・不利益を生じさせるようなことがあってはなりませんし、第三者に先に商標登録されてしまっては後々面倒です。

 

このようなリスクを考慮すると、たとえ自身が使わない略称であっても、需要者や顧客を保護するという観点から、商標登録をしておいた方が望ましいのではないかと思われます。

 

なお、自身が使わない略称を商標登録した場合、登録後3年を経過すると不使用取消審判による取消リスクが生じてきますので、どこかで少し使ってみるなどの留意が必要でしょう。

 

・「商標の略称」の商標登録例

それでは最後に、実際にどのような「商標の略称」の商標登録例があるのか、見てみましょう。私がざっくり調べた限りでは、たとえば以下のような商標登録例がありました。

 

皆様は、元の商標がどのようなものか、わかりますでしょうか?
※なぜか、ゲーム分野が多めになってしまいました(笑)。

 

・「スタバ\SUTABA」(登録4709891号)
・「ケンタ\KENTA」(登録4241001号)
・「ユニバ」(登録6348178号)他
・「famima\ファミマ」(登録4676581号)他
・「ドンキ」(登録5121753号)他
・「ドラクエ」(登録2465107号)他
・「スマブラ」(登録4366560号)他
・「ス-マリ」(登録2117396号)
・「桃鉄\モモテツ」(登録4811454号)他
・「デレステ」(登録5852639号)他
・「プリコネ」(登録6091113号)他
・「プロセカ」(登録6409477号)

 

というわけで、今回の記事では、「商標の略称」の商標登録について、少しお話をしました!

 

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