商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

やむを得ず商標変更の検討が必要となるケース

商標の変更」をする場合というのは、主に「前向きな理由」によるケースと、「やらかしが原因」となるケースがあると考えられます。

 

前者は、たとえば自社ブランドを一新するような場合。
後者は、他者の商標権を侵害してしまった場合等が挙げられるでしょう。

 

しかし、「前向きな理由」でも、「やらかしが原因」でもなく、商標変更の検討が必要となるケースというのも、中には存在します。

 

今回の記事では、このような、やむを得ず商標変更の検討が必要となるケースについて、少しお話してみたいと思います。

 

・まさに「商標災害」とも言えるケース

さて、「前向きな理由」でも、「やらかしが原因」でもなく、商標変更の検討が必要となるケースというのは、具体的にどのような場合があるでしょうか。

 

一例としては、偶然にも「社会的イメージの悪い名称」と、同じ名称の商標や、似ている名称の商標となってしまった場合が挙げられるでしょう。

 

「社会的イメージの悪い名称」というのは、たとえば、不祥事や悪事を働いて大きく報道されたような会社名・団体名・組織名・グループ名とか、悪の組織名、犯罪者のコードネームなどが挙げられるでしょうか。また、凶悪なウイルス名、悪質で有名なコンピュータウイルス名、差別用語やアンダーグランド用語なども、広く見れば含まれると言えるかもしれません。

 

こういった「社会的イメージの悪い名称」というのは、いつどこで世の中に出てくるかわからないというのが、実にやっかいなところです。たとえば、ある商標を採用して、長年使っていたら、ある日突然、偶然にも同じ名称の「悪の組織」の存在が大きく報道されて、その名称が瞬く間に有名になるということも、あり得ない話ではありません。

 

こうなってしまうと、(理不尽なことですが)同じ名称の商標というだけで、世間からのイメージが悪くなることは避けられないでしょう。また、ネット上の記事やSNSなどでその名称が大量に使われることで、自身の商標に関するウェブサイトなどが検索でヒットしにくくなってしまうことも懸念されます。SEO的、マーケティング的にも大打撃です。

 

自分には何の非も落ち度もないのに、ある日突然、このような仕打ちを受けるのは、まさに災害のようなものです。いわば、「商標災害」とも言えるかもしれません。

 

その「社会的イメージの悪い名称」の程度や実態にもよるとは思いますが、このような状況になってしまうと、事業者としては、やはりイメージダウンを回避すべく、商標の変更を検討せざるを得ないというのが、一般的になると思われます。

 

ちなみに、先般「新型コロナウイルス」が猛威を振るった際、「コロナ」を社名に含む企業などは、(ネットの情報によれば)やはり多少の悪影響を受けたようです。元々、「コロナ」の語に悪い意味があるわけではないので、これは完全にとばっちりなわけで、つくづく気の毒に思います。ただ、多くは会社名変更を行なうに至るまではなかったようで、そこは不幸中の幸いだったと思います。

 

・ネーミングの採用時には可能な限りでチェックしておきたい

自分の商標が、事後的に「社会的イメージの悪い名称」と同じ名称になったりしてしまうのは、残念ながら対策のしようがありません。相手が相手だけに、商標権を行使するのは無駄ですし、そもそも「商標的使用」と言えない場合も多いはずです。

 

こうなった場合、運が悪かったと思うしかないでしょう。

 

しかしながら、商標となるネーミングの採用時に、既存の「社会的イメージの悪い名称」と同じ名称または似ている名称ではないかをチェックすることは不可能ではありません

 

考案したネーミングの商標調査ももちろん大切ですが、たとえばインターネット検索を念入りにしてみるなどして、そのネーミングが既存の「社会的イメージの悪い名称」と同じ名称または似ている名称になっていないかを事前にチェックすることも、同じくらい大切と言えるでしょう。

 

とはいえ、さすがにチェックできる範囲には限界があるでしょうから、できるところまでで良いと思います。たとえ少しでも、やらないよりはよほどマシです。

 

ネーミング選考の際の意外な盲点かもしれませんので、覚えておきたいところです。

 

・自衛するのは難しいけれど・・・

繰り返しになりますが、自身の商標が、事後的に「社会的イメージの悪い名称」と同じ名称になったりしてしまうのは、対策のしようがありません。

 

他に誰も思い付かないような造語をあえて商標として採用するという手はあるかもしれませんが、ブランディングの観点を考えると本末転倒でしょう。

 

経営者ができることとしては、そういった事態が起こり得る可能性を普段から認識しておくことや、そういった事態に巻き込まれた時に会社としてどうするかという方針を、予め検討しておくことではないでしょうか。いざという時のために、第2候補となる商標をキープしておくというのも、一つの対策になるかもしれません。

 

確率としては、まず起こり得ることではないと思います。
おそらくは、宝くじで大当たりするくらいの確率ではないでしょうか。
ただ、「潜在的なリスク」として、覚えておいても損はないと思われます。

 

というわけで、今回は、やむを得ず商標変更の検討が必要となるケースについて、お話をしてみました。

 

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