商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

【商標登録】ネット検索に依存せず、自分の頭で考えることが大切

先日、20代の人の6割が、「スマホ依存症」を自覚しているというニュースに接しました。街中や電車などでの人々の行動を見ていると、20代にかかわらず、広い世代で「スマホ依存症」は深刻なのではないかという気が、個人的にはしています。

 

ネット検索に依存している」という人も、少なくないのではないでしょうか。
「ネットで調べれば、だいたいのことはわかる。」
たしかに、こういう一面はあると思います。便利な世の中になったものです。

 

しかしながら、ネット検索をする際、ネット上の情報等には、たとえば以下のような性質があることも、忘れてはならない注意点だと思います。

 

1.本当に有用な情報は、ネット上にはまず存在しない。
2.ネット検索によって、バイアスがかかるリスクがある。
3.ネット上の情報には、誰かの何らかの意図が含まれていることも多い。

 

そんなこと、わかってるよ!」という声が聞こえてきそうですが、いわゆる「依存状態」になっていると、意外と見落としてしまうおそれがあると思います。特に、忙しいなどの事情で、いろいろと余裕のない状況下では、注意すべきと言えます。

 

このような点は、あなたが商標登録や商標権侵害などについて知りたいと思った際にも、同じように作用すると考えられるでしょう。また、特許事務所や弁理士をネット検索で探す場面でも、影響があるかもしれません

 

というわけで、今回の記事では、たとえば商標登録や商標権侵害について知りたい場合、なぜ「ネット検索に依存せず、自分の頭で考えることが大切」なのか、上記の注意点とともに、簡単にお話してみたいと思います。

 

・本当に有用な情報は、ネット上にはまず存在しない

まず、「本当に有用な情報は、ネット上にはまず存在しない」という点から。

 

たしかに、ネット検索をすると、非常に有用な情報もたくさん見受けられます。
しかし、情報自体が高い価値を有するような分野では、よく考えれば当たり前のことですが、ネット上にホイホイと情報が掲載されるようなことは、まずないと理解すべきでしょう。

 

最近は、「ChatGPT」などの生成AIも流行しています。今後はおそらく、このようなAIに勝手に学習され、フリーライドのごとく利用されることを避けるため、「有用な情報」の持ち主は、ますますネット上には情報を掲載しなくなるのではないかと、個人的に予想しています。

 

専門的となる商標登録や商標権侵害などに関する情報についても、「本当に有用な情報は、ネット上にはまず存在しない」と、基本的には理解しておくべきでしょう。こういった情報を提供することが、我々専門家である弁理士にご依頼・ご相談いただくことによって生じる価値なのですから、ある意味で当然です。

 

費用をかけたくないという理由で、専門家への相談を躊躇して、ネット検索で一生懸命情報を集めているという人は、意外と少なくないと予想します。しかし、「本当に有用な情報は、ネット上にはまず存在しない」という当たり前の点を、ぜひ忘れないでいただきたいところです。

 

何事にも言えることですが、一生懸命に時間をかけてネット検索をするくらいなら、さっさと専門家に相談した方が、時間的なコストは節約できるのではないでしょうか。

 

ちなみに、個人的に最悪だと思うのが、せっかく専門家に相談をして見解等をもらったのに、それの正しさを確認するために、ネット検索をするような行動です。その結果、「ネット検索をしても、そんな情報はどこにもない。あの専門家の言っていることはきっとおかしい。」などと理解するのは本末転倒です(苦笑)。理由は、言うまでもないでしょう。

 

しかし、知らぬ間に、このような愚かな行動に陥っている人は、意外と少なくない気がします。こういった場合は、別の専門家にセカンドオピニオンを求めるのが、正しいやり方だと思います。自分の頭でしっかり考えれば、わかることです。

 

・ネット検索によって、バイアスがかかるリスクがある。

次に、「ネット検索によって、バイアスがかかるリスクがある」という点。

 

昔、ある医師の先生が、次のような話をされていました。

 

何らかの病気について、ネット検索をすると悪い情報ばかりが出てくることがある。
たとえば、ある治療法で治療をしても、うまくいかなかったという話が、患者のブログなどで多く見られることがある。こういった情報を見ると、その治療法を否定的なものとして判断してしまうバイアスがかかる。

 

しかし、そもそも治療が「うまくいった人たち」が、わざわざブログなどに書くケースは少ないものである。心理的な面を考慮しても、「うまくいかなかった人たち」による情報の方が、ネット上では多くなる傾向があると思われる。

 

なので、その治療で「うまくいった人たち」の方が実際には圧倒的に多かったとしても、ネット上では「うまくいかなかった人たち」による情報に多く接することになるため、ネット検索に頼っていると、その治療についての誤解を生じるリスクが高くなる

 

概ね、このような内容だったかと記憶しています。

 

「なるほど!」と思った人も、少なくないのではないでしょうか。
私も最初に聞いた時、目からウロコでした。
(ただ、「うまくいかなかった人たち」の情報も、個人的には貴重だとは思います。)

 

・商標登録や商標権侵害などに関する情報は?

このようなバイアスは、様々な情報についても同様に生じ得ると言えます。
商標登録や商標権侵害などについても、同じことが言えるでしょう。

 

たとえば、ネット検索をすると、「専門家に依頼せずに、自分で商標登録ができた」というブログ記事などに接することがあります。一方、「自分で商標登録をしようとして、見事に失敗した」という内容は、ほとんど見かけない気がします。すると一見、「商標登録は、専門家に依頼しなくてもできるものなんだ」と思ってしまいそうですよね。

 

しかし、ここで少し考えてみてください。
そもそも、「自分で商標登録をしようとして、見事に失敗した」という、自分の評価を下げるようなことを、わざわざネット上で書く人が、どれだけいるものでしょうか

 

商標権侵害についても同様でしょう。
ネット検索をすると、弁理士や特許事務所が、「他人の商標権を侵害してしまうと大変です!」などと言っているのを、多く見かけることかと思います。一方、実際に「他人の商標権を侵害してしまい、大変な目に遭った」といったような体験談などの情報は、おそらくまず出てこないと思います。すると、一見、「商標権侵害が問題になることなんて、実際にはそんなにないのだろう」とか、「弁理士が大げさに言っているだけだろう」などと思ってしまうかもしれません。

 

しかし、同様に少し考えてみてください。
そもそも、「他人の商標権を侵害してしまい、大変な目に遭った」ということを、わざわざネット上で書く人なんているでしょうか。個人としてうっかりやらかしたような笑い話であれば、まだネタとして書けるかもしれませんが、「商標権侵害」は事業者の立場としての話ですから、こんな話をネット上で書けば、自ら取引先や需要者の信用を失墜させるようなものです。できるだけ隠したいと思うのが普通でしょう

 

ちなみに、このあたりの話は、以下のコラムでも書いていますので、よろしければご参照ください。
【商標権侵害】ネットの情報で事例を理解したつもりは危険

 

必ずしも、「ネット上に情報がない=そのような事実がない」というわけではないという点、注意する必要があるでしょう。なぜ情報がないのか、自分の頭でよく考えることが大切です。

 

・特許事務所や弁理士をネット検索で探す場合は?

たとえば、商標登録を依頼する特許事務所や弁理士をネット検索で探す場合も、得られる情報については、おそらく同じようなバイアスがかかりやすいと思われます。

 

あなたは、特許事務所や弁理士への商標登録の依頼について、以下のような認識を持ってはいないでしょうか?

 

・商標登録の依頼は、格安料金でできるのが一般的。
・商標登録ができなかったら、返金保証があるのが普通。
・商標調査は、無料なのが当たり前。

 

ネット検索をすると、このような点をアピールしている特許事務所を多く目にすることから、これが一般的だと錯覚してしまうのも、無理はないかもしれません。

 

しかし、実際のところは、「商標登録は格安料金ではなく、返金保証もなく、商標調査は有料」としている特許事務所の方が、大多数だと思われます。(実際に調べたわけではありませんが、おそらく間違ってはいないはずです。)

 

日本全国には、約4,000程度の特許事務所が存在していると考えられます。
さて、ネット上で、上記のような売りをアピールしている特許事務所は、どれくらいあるでしょうか。仮に、ネット上で、こういった特許事務所が50もあれば、大多数のように感じるかもしれません。ですが、残りの3950の特許事務所は違っていたら、実際にはどうでしょうか?

 

ちなみに、私も商標登録の料金見積り依頼があった際に、
なぜ、そちらの事務所はこんなに高いのですか?
と、ごくまれに聞かれることがあります。

 

業界的に見れば、リーズナブルな料金設定にしているにもかかわらずです(苦笑)。
このような質問をしてくる方は、完全にネット検索のバイアスにかかっていると言わざるをえません。きっと、格安料金を謳う特許事務所と比較しての発言なのでしょう。他事務所と比較されるだけでも不愉快なのに、こういった発言は、正直カチンときます(笑)。

 

そもそも、聞く相手が間違っていると思います。
なぜ、そちらの事務所はそんなに安いのですか?
と、格安料金で依頼を受けている特許事務所の方に聞くべきではないでしょうか。

 

ネット検索に依存していると、悪気なく誰かを不愉快にさせるおそれもあります。
やはり、自分の頭でしっかりと考えてから、発言はしたいものです。

 

・ネット上の情報には、誰かの何らかの意図が含まれていることも多い。

最後に、「ネット上の情報には、誰かの何らかの意図が含まれていることも多い」という点について。

 

これについては、特に経営者の方であれば、よく理解しているという人は多いのではないでしょうか。今さら、いちいち述べる必要もないでしょう。

 

たとえば、ネット上の何らかの「おすすめランキング」などといった情報。
ランキングではなく、「おすすめの〇〇〇 ◎選」のような情報も、ネット上には多いかもしれません。

 

今の時代に、こういった情報を鵜呑みにするのは、あまりにピュアすぎだと言えるでしょう。どこかで騙されないか心配です。

 

その情報やランキングに、根拠はあるでしょうか?
裏でお金が動いているなどといった事情はないでしょうか?

 

もちろん、こういった情報やランキングを頭ごなしに否定するつもりはありません。
根拠となる確かな事実があれば、信用しても良いとは思います。
ただ、その場合でも、「誰が」発信している情報であるかは、気にした方が良いでしょう。その誰かは、「何のために」そのような情報発信を行なっているのでしょうか。いつのまにか、何らかの意図によって印象操作をされてはいないでしょうか。

 

ちなみに、今回の記事は、「知らぬ間にネット検索に依存しがちな方々の不利益を少しでも減らしたい」という思いでネタにしたものですが、この記事についても、「筆者の言っていることは信用できるのか」とか、「実は、何か別の目的があって言っているだけではないか」くらいの疑いの目で見ていただいた方が、(私としては悲しいですが)望ましいと思います(笑)。

 

最近の若い世代(デジタルネイティブ)の方が、こういった点にはリテラシーがある印象を受けます。むしろ、経営者として多いと考えられる40代~60代くらいの人たちの方が、ある意味まっすぐで、注意が必要だと個人的には思います

 

というわけで、今回の記事では、ネット検索に依存するリスクについて、商標登録や商標権侵害などについて知りたい場合なども含め、簡単にお話いたしました。皆様に何か気付きがあれば幸いです。

 

========================
<このブログの筆者の弁理士事務所はこちら>
紫苑商標特許事務所

<筆者への仕事のご依頼>
本ブログからのお問い合わせ

Twitterでは、更新情報をお知らせしております!
ぜひ、フォローしてみてください。

========================