商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

「阪神優勝」といえば・・・

阪神優勝」。

 

2023年9月14日、阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を果たしたということで、メディアでも大変盛り上がっていますね。

 

さて、おそらく今日は多くの弁理士などの方々が言及しているかと思われますが、「阪神優勝」と聞くと、思い出される商標関連の事件があります。

 

今から20年前の2003年のこと、この年も世の中は「18年ぶりに阪神タイガースが優勝しそう」ということで盛り上がっていました。ところが、どこから話題になったのか、以下のような阪神優勝」という商標が、2002年に、ある個人によって商標登録されていることが判明したのです。

 

※商標は特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)のデータより引用。

<指定商品>
第25類「被服,ガーター,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
第28類「遊戯用器具,おもちゃ,人形,運動用具」

 

そして、新聞やテレビなどのメディアにより、この商標登録が原因で、「阪神タイガースが優勝しても、これらの優勝関連グッズ商品に『阪神優勝』を使えないのではないか」といったような話が報道され、大きな話題となりました。(※注:20年前の話なので、記憶が曖昧です。厳密にはちょっと違っていたかもしれません。とにかく、「阪神優勝』が使えないのではないか?」という話題だったはずです。

 

個人が商標登録をする妥当性に疑義があると思われる商標について、特許庁が商標登録を認めていたという点では、少し前に騒動になった「ゆっくり茶番劇」のケースに近いと言えるかもしれません。

 

ただ、当時はまだSNSスマホがない時代ですので、一般の方々のバッシングによる「炎上」は、今の時代ほど目につかなかったような気がします。もちろん、ネット上では、匿名掲示板などで、それなりに非難の声は多く上がっていた記憶がありますが。もし、これが今の時代の話であれば、とんでもない規模の「炎上」が起こっていたであろうと推測されます。

 

その後、阪神タイガース側は、この商標登録に対して、2003年8月に「商標登録無効審判」を請求し、特許庁は登録の無効を認めました

 

理由の要旨としては、「本件商標は、その構成中に、請求人のプロ野球球団の「阪神タイガース」の略称として本件商標の登録出願前より登録査定当時まで著名であった「阪神」の文字を有するものであり、また、阪神タイガースとの連想性を高める図形部分を有するものであるから、これをその指定商品について使用する場合は、需要者をして、該商品が阪神タイガース又は阪神タイガースより許諾を受けた業者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある(商標法第4条第1項第15号違反)」という点が挙げられています。

 

結局、この騒動がその後どうなったかなどは、テレビなどでほとんど話題にはならなかった記憶があるのですが、とりあえず「一件落着」となった次第です。

 

2003年といえば、ちょうど私が弁理士を目指して勉強を始めた年でした。
それもあったからか、この「阪神優勝」の商標登録騒動のことは、特に印象に残っています。しかし、あれからもう20年経ったのかと思うと、時の流れの速さに驚くばかりです。

 

というわけで、今回は「阪神優勝」に関する懐かしの(?)商標関連の事件について、振り返ってみました。

 

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