商標を愉しむ 或る弁理士の銘肌鏤骨ブログ

商標ブログ、こっそり始めました。商標弁理士の永露祥生によるブログです。

老舗のお菓子の商標を愉しむ

「商標を愉しむ」方法は、必ずしも商標実務だけではありません。
むしろ、普段の日常生活での方が、商標を愉しむ機会は多いのではないでしょうか。

 

たとえば、旅行先のお土産屋さんで売っているお菓子の箱などに、デーンと商品名が書いてあり、その近くにこれまたドーンと「登録商標」という文字が表示されているのを、目にしたことはないでしょうか?

 

観光地のお土産屋さんでなくても、ショッピングモールにある地域物産店のような所でも、このような商品を目にすることは、意外とよくあるのではないかと思われます。

 

さて、こんなふうにドーンと

 

登録商標

 

と表示されていると、何だか気になりませんか?

 

登録商標」とは、商標登録がされた商標のことをいいます。
よって、その商品の商品名は、商標登録がされているということを意味します。

 

ちなみに、商標法第73条には、こんな規定があります。

 

(商標登録表示)
第七十三条 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、経済産業省令で定めるところにより、指定商品若しくは指定商品の包装若しくは指定役務の提供の用に供する物に登録商標を付するとき、又は指定役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該指定役務の提供に係る物に登録商標を付するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない

 

ダラダラとくどい条文ですが(苦笑)、要は、商標登録をした商標を商品やサービスに使うときは、それが登録商標である旨の表示を付けなさいよ、という規定です。

 

ただ、「付するように努めなければならない」という努力規定なので、権利者の義務ではありません。なので、付けたくなければ、別に付けなくても特許庁から怒られたりはしませんし、ペナルティも特にありません。

 

なお、この表示を正確にする場合は、「登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号」のように表記する必要があります。まぁ、世の中の商品やサービスを見渡すとわかりますが、律儀にこのような表記をしている事業者は、実際のところほとんどいないでしょう。付けていても、大半は慣例的な「Rマーク(®)」で代用している感じです。

 

ただ、「Rマーク(®)」が使われることが多い現代の世の中で、上述したようなお菓子、特に老舗のお菓子とか、お酒の瓶のラベルには、登録番号まではなくとも、なぜか「登録商標」と表示されていることが多い気がします。

 

さて、話が戻りますが、このようにドーンと「登録商標」と表記されている商品を目にすると、私はいろいろ気になって仕方がありません。「Rマーク(®)」が付いている商標はあまり興味を惹かれないのですが、「登録商標」と書いてあるとムショーに気になるのはなぜでしょう(笑)。

 

まず、「本当に、現在も商標登録がされているのか?」という点。

 

実は、「登録商標」の表記があるお菓子などは、過去には商標登録されていたものの、更新手続を忘れたのか、あえてしなかったのか、現在では存続期間がすでに満了しているということも、私の経験上、意外と少なくないのです。おそらく、当時の包装紙や包装箱を使い続けているので、今もそのままになってしまっているのでしょう。(厳密に言えば、虚偽表示になる可能性もありますので、この状況は結構ヤバかったりします。)

 

次に、「いつ頃、登録されたのか?」という点。

 

これがわかると、その商品にどれくらいの歴史があるのかがわかります。
少なくとも、登録日から現在までの期間以上より前から、その商品が存在していたということになりますからね。老舗の商品を楽しむ場合は、有用な情報になります。

 

もちろん、権利者が誰なのか、指定商品・指定役務は何なのかも知りたくなります。

 

というわけで、私がこのような商標を見かけたら、その場でまたは帰宅してから、まず「J-PlatPat」のデータベースを使って検索しますね。(スマホからも使えます。)

 

検索方法は簡単です。
そういえば、先日、久しぶりに会った友人にお菓子のお土産をもらったのですが、この商品の包装紙などにも「登録商標」という文字がデーンと表示されていました。

 

ゼイタク煎餅」という老舗のお菓子なのですが、ちょうど良いので、ここで実際にこの商標を調べてみましょう。もしよろしければ、皆様もぜひ一緒にやってみてください。

 

1.まずは、上述の「J-PlatPat」にアクセスします。
2.「商標(マーク)」のフォームに、商品名を入力します。
検索項目はどれでもいいのですが、一番下の「称呼(類似検索)」が一番確実かと思いますので、今回はこちらを使います。
3.キーワードは、カタカナで「ゼイタクセンベイ」と入力します。
4.画面一番下の「検索」ボタンを押します。

 

J-PlatPat検索画面

すると、検索結果が2件出てきます。
1番目の方が、今回探していた商標ですね。
検索が面倒だという方は、こちらからどうぞ。

 

登録番号をクリックすると、商標の詳細情報を見ることができます。

 

これを見ると、たしかに「ゼイタク煎餅」が商標登録されているのがわかります。
そして、登録日は「昭和30年(1955年) 1月 22日」です。
なんと、約70年も前から商標登録がされていたことがわかります。

 

ちなみに、Wikipediaによると、「ゼイタク煎餅」は1917年から販売開始されているということなので、この商品には100年以上の歴史があるということになります。100年以上も人々に愛されてきた商品、とても美味しかったのも納得です。

 

こんな感じの「商標の愉しみ方」もあります。
皆様もどこかで「登録商標」と書かれた老舗の商品やサービスを見かけたら、ぜひ「J-PlatPat」を使って検索してみてはいかがでしょうか。もちろん、「Rマーク(®)」が付いたものでもかまいません。

 

商標を検索するだけで、きっと何か新しい発見があるのではないかと思います。
意外と楽しいですヨ!

 

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